ページ番号:636651431
令和7年度(2025年度)施政方針
令和7年(2025年)第1回市議会定例会が開会され、石阪市長は2月21日の本会議で施政方針を表明しました。ここでは、その全文を掲載します。
はじめに
令和7年第1回町田市議会定例会の開会にあたり、令和7年度の施政方針を申し述べさせていただきます。
議員各位並びに市民の皆様のご理解、ご協力を賜りますよう、お願いを申し上げます。
2025年度の市政運営の視点
まず、市政を取り巻く状況について、私の認識をお話しします。
戦争の火は未だに消えず、世界の覇権争いは激しさを増しております。国際的な秩序が揺らぐことで、社会経済にも大きな影を落としており、先行きの見えない時代の不安を増長させております。
国内におきましては、物価の高騰と同時に、長らく低迷を続けてきた賃金の上昇もあり、インフレが進んでおります。国は、これからの経済見通しとして、「物価上昇が落ち着くことで個人の消費や企業の設備投資などの内需が増加し、成長を牽引する」との見方を示しているものの、依然として企業活動や行政運営においては大変難しい対応を要する時期にあるように感じています。
また、物流をはじめ、交通や建築業界に顕著に見られる人材不足につきましては、都市部においても人口減少や少子高齢化の影響をリアルに実感する場面が多くなっており、市民生活や市が進めるまちづくりへの影響を懸念しております。
一方、生成AIをはじめとしたデジタル技術は、私たちの生活に着実に浸透しています。そして、こうした技術は今や、人材不足や災害への備え、脱炭素化や循環型経済へのシフトなど、様々な社会課題を補い、持続可能な社会を実現するための欠かせないツールになっております。市におきましても、行政のDXを加速化させており、地域課題の解決や市民の皆様が生活の質の向上を実感できる取り組みを進めているところでございます。
加えて、私といたしましては、いわゆるスマホ1台で情報が得られ、あらゆることが個人で完結するデジタル社会だからこそ感じる、“人と人とのつながり”といった価値を大事にし、支え合いの力を高めていくことに注力していきたいと考えております。
地域においては、町内会・自治会をはじめとした担い手不足の問題が進んでいます。そして、コロナ禍以降は特に、地域と行政の役割分担の範囲というものが少しずつ変わってきているように感じております。こうしたことから、賑わいの原動力となる、あるいは、支え合いや災害等の有事における絆の根源となる地域コミュニティのあり方を、ここで今一度、捉え直していく時期に差し掛かっているというふうに認識をしています。
時代や社会がいくら変わろうとも、人が人とつながり、そこから生まれる賑わい、支え合いを求めることは不変であります。つながりの力を最大限に引き出す、もっと言えば、時代に合った新しい絆を再構築し、より強固にしていく、このことが行政の役割であると考えております。学校統合をきっかけとして、市民生活の拠点としての学校を“地域活用型学校”とあえて打ち出したことも、その表れであります。
子どもたちの活動の中心となる学校で、地域活動が広がり、みんなで子どもたちを見守り、育てる。その姿こそが“子どもにやさしいまち”であり、子どもたちの成長とともに、私たち大人の成長がカタチになり、幸せを感じられる地域の未来を描いております。
また、市制施行から65年余りが経ち、長い歳月をかけて多くの方々の期待や希望を叶え、成長を遂げてきた街が更新の時期を迎えています。さて、未来の町田に思いを馳せますと、これからの都市づくりは、ワクワクする体験ができるエンターテインメントや、心なごむ憩いの空間など、“みんなが楽しめるまち”がキーワードであり、人と人とが交流し、みんなの夢をかなえていくことができるまちを目指していきたいと考えています。
これまで形作ってきた、交通の利便性や商業の賑わい、都市と緑のバランスのちょうどよさに加え、私たちのまちにはたくさんの顔があり、誇れる強みがあります。「子育て家庭に選ばれる、全国でも有数の子どもにやさしいまち」、「サッカーJ1で大躍進を遂げたFC町田ゼルビアのまち」、「アニメの舞台としても取り上げられるユニークなまち」などと言った、町田市らしさを強みに、まだまだ多くの方々に期待をしていただき、魅力を感じていただけるよう、まちづくりを進めていかなければならないと感じています。
そのためには、時代や社会の変化、あるいはニーズをしっかりと捉えて、公共施設の機能を高めていくための未来への投資を、着実に実行することが必要です。これまで築き上げてきた歴史や文化、更には、町田らしさを活かして、周辺市を含めたエリアの中核を担う都市として、これからのまちづくりを先導していく考えであります。
ただ今述べてきましたとおり、町田市のまちづくりは“人が主役”です。人と人とのつながりを軸に、次世代につながるまちの好循環を生み出し、魅力を高め続けていくこと、このことがまちの未来の舵取りを託された私の責務であります。
これまでのまちづくりを通して、人と人をつむぐ温かな交流の土壌、そう言ったつながりの土台が、町田市にはしっかりと根付いております。これからも、市民の皆様が互いに尊重し、互いに助け合い、温かなつながりから幸せを感じられるまちづくりを進めて、「なんだかんだ言っても、やっぱりまちだが一番」と思っていただけるまちとしてまいります。
2025年度の主要な施策
それでは、2025年度の主要な施策について、「まちだ未来づくりビジョン2040」に掲げる3つの「なりたいまちの姿」ごとに、説明をいたします。
ここでの成長がカタチになるまち
1つ目は、“子ども”がキーワードの「ここでの成長がカタチになるまち」についてです。
子どもたちが健やかに成長し、主体的に行動できるようになるためには、子どもたち自身でやりたいことを見つけ、積極的にチャレンジすることの積み重ねが大切です。子どもたちの権利を尊重できるよう、あるいは、行動の幅を広げられるよう、子育て家庭だけでなく、子どもを取り巻く全ての人の手で、子どもたちの成長を支え見守る、そのような子育て環境を整えてまいります。
昨年の5月には、子どもにやさしいまちの理念を市民の皆様と共有できるよう「町田市子どもにやさしいまち条例」を施行いたしました。この理念を具体的な形にし、実現していくため、この4月からは「(仮称)町田市子どもマスタープラン25-34」をスタートさせてまいります。この新たな計画では、施策の評価にユニセフ、国連児童基金のグローバルな基準を取り入れ、取り組みの質を一段と高めてまいります。加えて、子ども関連の部署だけでなく、全ての部署、あらゆる事業において、子ども視点のまちづくりを一層推進してまいります。
そして、条例の理念を実現する取り組みの一つとして実施しております「まちだ若者大作戦」は、いよいよ最終年度を迎えます。町田薬師池公園四季彩の杜西園での「野外音楽フェス」の開催や、市立総合体育館での「ダンスでつながろう!まちだんすプロジェクト」など、これまで多くの子どもたちのやりたいことが実現してまいりました。集大成を迎える2025年度も、子どもたちの自由な発想による様々な取り組みが大いに盛り上がるよう、支えてまいります。
その一方で、すべての子どもたちの穏やかな暮らしを守ることも肝要です。6月には、都立児童相談所が山崎保育園の隣の土地に設置され、同じ建物には、市の子ども家庭支援課や教育センターを移転いたします。児童相談所と子ども家庭センターとの連携を強化することで、妊娠期から関わり、子どもと子育て家庭が安心できる生活環境を支えてまいります。
また、子どもたちの日々の暮らし、遊び方の選択肢を広げる子どもクラブにつきまして、2025年度末の開設を目指す(仮称)成瀬子どもクラブは、地域の子どもたちの意見を取り入れ、愛着を育める施設として建設工事を進めてまいります。そして、市内9か所目、最後となります金井・薬師地区の子どもクラブにつきましては、建設に向けて、基本設計と実施設計を行ってまいります。
さらに、子どもの健やかな成長を支える保育の場といたしましては、さらなる保育ニーズの高まりが見込まれる南地域において、2026年4月の開設を目指して、認可保育所の整備を進めてまいります。
加えて、保護者の就労等の有無にかかわらず、0歳児から2歳児の未就園児を預かる、国の「(仮称)こども誰でも通園制度」の本格実施を見据え、現在3園で実施しておりますモデル事業の実施園数を拡大してまいります。なお、東京都が9月から予定している保育料無償化の第一子への拡大につきましては、動向を注視し、準備を進めてまいります。
次に、子どもたちが最も多くの時間を過ごす学校環境の充実についてです。“まちだの新たな学校づくり”におきまして、初めての学校統合となる、「本町田ひなた小学校」と「成瀬小学校」が、この4月に開校いたします。少子化が進行する中、都市部においても今後避けて通れない「学校統合」という問題に対して、先駆けて着手するものであり、今後の象徴となる取り組みと考えております。あとに続きます、鶴川東地区、鶴川西地区の学校統合や、南第一小学校の建て替えについても着実に実行し、未来を担う子どもたちの学校環境を充実させてまいります。
また、様々な理由で今の学校に通いづらい子どもたちも安心して学べる、多様な学びの場の提供も急務となっております。この4月からは、中学生を対象とした「分教室型学びの多様化学校」を教育センター内に開室いたします。子どもたち一人ひとりが、安心して学び、心身ともに健やかに育つことが出来る環境を整えてまいります。
そして、育ち盛りの子どもたちが充実した学校生活を送り、健やかに成長していくためには、毎日の食事が大切です。栄養バランスの取れた温かい給食を、皆で食べられるようになる中学校全員給食は、先月、鶴川エリアの中学校で始まりました。これを皮切りに、2025年度の1学期から町田忠生小山エリア、同じく2学期から南エリアで給食提供を開始し、いよいよ市内全域で実現をいたします。
なお、先月からは、市立全小・中学校の給食費の無償化を実施しております。昨今の急激な物価高騰の中、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ってまいります。
わたしの“ココチよさ”がかなうまち
続いて、なりたいまちの姿の2つ目は、“くらし”がキーワードの「わたしの“ココチよさ”がかなうまち」についてです。
都市の賑わいと商業の発展によって、多くの人が集まり、活気のあふれるまち。公園や里山などの緑を身近に感じ、豊かな自然環境に囲まれた心安らぐまち。これらを併せ持つちょうどよさこそが、町田市の大きな魅力です。この先の未来も、賑わいと安らぎにあふれ、誰もが居心地のよさを感じる、そのような暮らしやすい環境を整えてまいります。
まずは、暮らしの安心感を支える都市基盤の整備と経済の活性化についてです。
将来にわたって町田市が賑わい続けるまちであるためには、活気の中核を担う町田駅周辺の中心市街地に、“誰かと一緒に楽しむ・体験する”といったエンターテイメントによる新しい賑わいを加えていきたい、そのように考えております。市では、昨年の6月に「町田駅周辺開発推進計画」を策定をしております。このまちづくりに関する共通指針に基づいて、2025年度は、地権者や開発関係者との合意形成と、まちに関わる皆様との対話を着実に進めてまいります。加えて、誰にとっても分かりやすく、便利で快適なバスセンターや、ペデストリアンデッキ等の交通基盤の新しい姿を具体的に示すための検討にも取り組み、その後の都市計画決定や事業化につなげるスタートの年としてまいります。
そして、誰かと一緒に楽しむまちづくりに先立ち、来月には、原町田大通りが生まれ変わります。まず、民間交番があった場所には、“まちの案内”を担う「町田駅前交流拠点はっとまちだ」がオープンします。この交流拠点は、まちの案内に加えて、中心市街地の新たなシンボルとして、地域のイベントの情報発信や商品の販売なども行います。また、これまで4車線あった車道は半分の2車線となり、広がった歩道スペースには、ベンチなども配置いたします。加えて、地元商店会や事業者等が、食事や物販などの出店、あるいは、季節に応じたイベントを行える環境を整えることで、新たなビジネスチャンスにも結び付けていける、夢のある原町田大通りを目指してまいります。
この原町田大通りを歩いた先にある芹ヶ谷公園“芸術の杜”におきましては、2029年度のオープンを目指して、公園全体で芸術を体感するというコンセプトを実現させていくことで、豊かな自然と様々な文化芸術を気軽に楽しめるようにしてまいります。まずは、園内のエレベーターの整備工事を開始し、芸術の杜が一望でき、誰もが安心して公園内にアクセスできる環境を整えてまいります。
さらに、町田駅を起点として、新たな人々の流れを生み出すのに欠かせない、多摩都市モノレールの町田方面延伸につきましては、引き続き、東京都との連携を図りながら、事業性の検証などを行い、開業までのプロセスを着実に進めてまいります。
延伸が実現しますと、沿線地域の交通利便性が向上するだけでなく、市内各地で住宅や商業施設の進出、団地の再生、更には里山の活用など、新たな賑わいが生まれてまいります。そして、沿線のまちの魅力が一段と高まり、多くの人々が行き交うことで、沿線地域の活性化を一層進めてまいります。
具体的な取り組みとしまして、2025年度は、木曽山崎団地地区において、地域の皆様とともにモノレール延伸を見据えたまちづくりを進めるため、「町田市木曽山崎団地地区まちづくり構想」を改定し、新たな賑わいの創出を目指した、団地の再生を進めてまいります。
また、まちの賑わいづくり、利便性の向上という点では、東の玄関口である鶴川駅周辺のまちづくりを着実に進めてまいります。先月、1月25日には、鶴川香山園がオープンいたしました。街中を離れて美しい庭園を眺めながら、お茶や食事も楽しめる空間として、訪れる皆様におもてなしを提供しております。この新たな観光名所を、地域の回遊性を高める拠点とすることで、鶴川エリア全体の活性化につなげていきたいと考えております。
2025年度は、鶴川駅の駅舎改良工事のほか、南北自由通路やデッキ工事、南口の土地区画整理を引き続き進めるとともに、三輪緑山方面とのアクセスの向上と周辺道路の交通環境を改善する鶴川駅南口アクセス道路の整備を進めてまいります。
もう一つ、相原駅周辺のまちづくりにおきましては、大戸踏切の立体化工事に伴い、町田街道から駅の東口に至る新たなアクセス路の整備工事を引き続き進めてまいります。そして、地域の交流を一層深める広場空間の整備を進めるとともに、沿道の商業や交流の機能を充実させることで、新たな賑わいをつくってまいります。
次に、市民生活を支える環境の整備についてです。
居心地のよさや住み心地のよさを叶える上では、都市基盤の整備に加えて、日常的にみどりに触れられる、あるいは、感じられる環境があり、それらを整え、次世代へと引き継いでいくことが重要です。
豊かな緑を有する野津田公園スポーツの森におきましては、FC町田ゼルビアのホームグラウンドとして、昨年は日本全国から大変多くの方々にお越しをいただきました。大きなイベントで盛り上がりを見せる公園へのさらなるアクセス向上のため、大型バス転回広場の整備に取り組んでまいります。加えて、園内には、新たにスケートパークを整備し、初心者から上級者まで、スケートボードやBMXなどのニュースポーツを存分に楽しむことのできる場として、更に盛り上げてまいります。自然の中で楽しむ総合スポーツパークを目指して、スケートパークの設計を進めてまいります。
また、野津田公園の西側に位置する小山田蓮田緑地では、大賀ハスの名所として、長年地域に親しまれてきた小山田神社周辺に広がるハス田を、より多くの人に楽しんでいただけるよう、その魅力を活かした公園へと整備を進めており、7月に開園を予定しております。
そして、市内に広がる豊かな緑、この貴重な資産を未来につなげていくためには、自然環境の保全が不可欠でございます。昨年、国内では、観測史上最も高い平均気温を記録しており、これ以上の温暖化を食い止めるには、一自治体としての役割を確実に果たしていかなければなりません。
そのため、環境施策を推進するための基本計画「第3次町田市環境マスタープラン」を、来月一部改定し、温室効果ガス排出量の削減目標の引上げや重点プロジェクトを追加するなど、「ゼロカーボンシティ」実現に向けた取り組みをより強力に推し進めてまいります。さらに、新たな環境負荷軽減の取り組みといたしまして、2026年度からは、市内全域で容器包装プラスチックの分別収集・資源化の開始を予定しております。次世代によりよい環境を引き継ぐため、市全体の分別協力率の向上を目指しておりますので、市民の皆様におかれましては、分別へのご協力をお願いを申し上げます。
誰もがホッとできるまち
なりたいまちの姿の3つ目は、“つながり”がキーワードの「誰もがホッとできるまち」についてです。
市民の命を守ること、あるいは、地域の治安を守ること、これは市の最も重要な責務でございます。今後起こりうる大災害や、市民生活を脅かす組織的な犯罪等に備えて、いざという時には、協力して支え合い、助け合える地域であることが大きな安心となります。変化し続ける時代の中でも、温かな地域のつながりを大切にできる、そのような安心して住み続けられるまちをつくってまいります。
災害への備えという点では、地域における自助・共助の力が最大限に発揮され、まち全体の防災力が高められるように、市として確実に情報を届けていくことが重要です。先月には、避難施設に指定している市立全小・中学校にWi-Fi環境を整備しております。2025年度は、災害時に、市民の皆様が在宅避難や避難施設で生活をするうえで、平時の備えや非常時の行動などをわかりやすくまとめた冊子を作成し、全戸配布をしてまいります。
また、地域の防災力向上の取り組みといたしまして、イベント等を通じて在宅避難に必要な知識を習得できるよう、マンションや団地を対象とした「町田市版マンション防災」を推進するなど、日頃から災害に備える意識の啓発に努め、自助・共助の力を高めてまいります。
さらに、共助におきましては、いざというときに速やかに避難することが難しい方々の避難支援において、とりわけ、地域の皆様のお力が欠かせません。全ての方々が確実に避難できるようにするため、避難行動が難しい方に向けて、前もって実際に取るべき避難行動や支援者を記して災害に備える、個別避難計画の作成を進めてまいります。現在、鶴川地区をモデル地区として作成しており、2025年度は、関係機関や支援団体、地域の方々と一体となって、地域全体で作成してまいります。これからも、皆様の生命・身体・財産を守るため、地域の防災力をより一層強化してまいります。
また、昨今、闇バイトを発端とする強盗事件や特殊詐欺が全国的に多発しており、市内においても、地域の防犯対策が喫緊の課題となっていることを踏まえ、市民生活の安全強化対策を支援するため、防犯対策に対する費用の一部を補助してまいります。
一方、住み慣れた地域で困りごとがなく生活できることは、日頃の大きな安心感につながります。昨年の12月には、日常的な買物が不便な地域において、食料品や日用品の移動販売をスタートしました。民間企業や町内会・自治会等とも連携し、買物支援と合わせて、交流の機会づくりや見守り機能を充実させていく取り組みでございます。市内26か所で展開しており、引き続き進めてまいります。
また、福祉の困りごとにおきましては、既存のサービスでは支援に結びつかない、制度の狭間にいる方や、支援の声をあげられない孤立した方への支援体制を整えております。早期に適切な相談支援機関につながり、必要な支援が受けられるよう、「まちだ福祉〇(まる)ごとサポートセンター」の設置を進めており、この4月の町田地域への開設をもって、市内全域に設置が完了いたします。市内5か所のサポートセンターが中心となって、地域のそれぞれの支援機関と連携しながら、困りごとの解決につなげてまいります。
多様な人々がともに暮らす地域社会において、相互理解を深めていくには、誰もが生き生きと活動できる場の整備も不可欠です。「(仮称)町田木曽山崎パラアリーナ」は、障がいの有無等にかかわらず安全・安心に利用できるユニバーサルデザインを取り入れ、誰もが利用しやすいインクルーシブな施設づくりを進めております。2025年度は基本設計と実施設計に着手し、2028年度のオープンを目指してまいります。
さらに、心のバリアフリーを推進する一つといたしまして、聴覚障がい者の理解促進と手話言語の普及啓発を一層推進するため、「(仮称)町田市手話言語条例」の制定に向けた検討に着手してまいります。日常生活のバリア解消や、相互理解を推進することで、共生社会の実現を目指してまいります。
みんなの“なりたい”がかなうまち
続いて、「まちだ未来づくりビジョン2040」に掲げる「行政経営の姿」である「みんなの“なりたい”がかなうまち」について、3つの「経営基本方針」ごとに、説明をいたします。
これまでに経験したことがない急激な社会経済の変化を乗り越え、未来に向けて投資していくために、変化を的確に捉え、あるいは、予測して、市民サービスや仕事を絶えず見直し、持続可能な市役所を目指してまいります。
共創で新たな価値を創造する
それでは、まず、基本方針1「共創で新たな価値を創造する」についてでございます。
地域の皆様とのコラボレーションについては、様々な方がアイデアを持ち寄り、対話を行う「-THE YORIAI-」、人と人、人と組織をつなげる「まちカフェ」、若者の“やりたいこと”を実現につなげる「まちだ若者大作戦」など、市独自のオープンイノベーションの取り組みにより、地域課題の解決が進んでいると感じております。
また、事業者の皆様とのコラボレーションについては、2024年度から、公民連携窓口「Co‐Laboまちだ」を設置し、事業者の皆様の“地域に貢献したい”という想いの実現に向けて、社会課題の解決や市民サービスの向上に繋がる提案をいただく「民間提案制度」を開始いたしました。引き続き、より多くの提案をいただけるように、取り組んでまいります。
大学とのコラボレーションについては、2024年度に開催した「市民参加型事業評価」では、中央大学と連携協定を締結し、大学生のアイデアを取り入れ、よりオープンな取り組みといたしました。
2025年度は、法政大学と、「住み続けたいまち」における地域コミュニティのあり方について、引き続き共同研究を行い、持続可能な地域のコミュニティづくりに向けたロードマップを作成いたします。
これらのオープンイノベーションの取り組みを推進する前提として、市が保有する膨大な情報をオープンデータとして公開し、市民や事業者の皆様にも、ご利用いただけるようにする必要があります。これに向けて、2025年度は、市に関わる官民のデータを集約し、生成AIを活用することで、欲しい情報を、検索や分析ができ、視覚的にわかりやすい図表やグラフを作成できるようにする、オンラインシステム、「オープンデータ ファクトリーまちだ」を、インターネット上に構築いたします。
これにより、誰もが、市に関連する膨大なデータを簡単に利活用できるようになります。
引き続き、市民や事業者、あるいは大学などの皆様との対話による「つながり」を大切にして、様々なコラボレーションを行うことで、市だけでは持ちえないアイデアやノウハウ、最新のテクノロジーを積極的に取り入れ、これまでにないサービスや、新しい価値を市民の皆様に提供してまいります。
対話を通して市役所能力を高める
次に、基本方針2「対話を通して市役所能力を高める」についてです。
行政サービスのDXについては、2021年度に「町田市デジタル化総合戦略」を策定し、デジタル化施策を継続的にバージョンアップすることで、便利で手間のかからない「バーチャル市役所」の実現を進めてまいりました。
オンライン手続きの推進については、2024年度に、オンライン行政手続の玄関口となる「まちドア」と、生成AIと3Dアバターを組み合わせた、全国初のオンライン行政手続検索サービス「AIナビゲーター」を導入いたしました。
さらに、市役所に来庁して手続する方に対しても、お待たせすることのないように、「オンライン窓口予約サービス」を導入いたしました。
来月3月から、図書館では、来館することなく、マイナンバーカードを活用してオンラインで利用登録ができるサービスや、スマートフォンを図書館利用券として使うことができるサービスを新たに導入し、本に親しむ機会を増やすとともに、業務の効率化を図ってまいります。
また、2025年度には、要介護認定調査にAIを導入することで、事務の正確性向上や職員の負担軽減を図ります。加えて、介護認定審査会について会議のオンライン化と、資料のペーパーレス化を進めることで、審査にかかる時間を短縮し、早期の結果判定を実現します。これらの取り組みにより、高齢化の進展に伴う、介護を必要とする方の増加に対応してまいります。
さらに、保育サービスについてもDXを進めてまいります。公立、民間問わず、保育園探しから入園までの手続がオンラインで完結する「保活ワンストップシステム」を導入し、保護者の利便性向上を図ります。
人手不足の深刻さが増す中で、デジタル化の重要性は益々高まっております。引き続き、「行政サービス改革=DX」の認識のもと、人にやさしいデジタル社会の実現を目指してまいります。
職員の人材育成については、今月、職員の様々な意見を反映した、「町田市職員人材育成総合プラン25-29」を新たに策定し、めざす職員像として「みんなを思いやり、自ら考え、自ら行動し続ける職員」の実現に向け、3つの方針として、「成長できる職場」、「働きやすい職場」、「選ばれる職場」を定めました。
市民目線を持って、常に業務改革や改善をし続けるチャレンジ精神を持った職員を育成してまいります。
また、多くの方に町田市役所で働きたいと思っていただけるように、町田市役所の魅力をしっかりとアピールして、意欲ある仲間を募ってまいります。
次世代につなぐ財政基盤を確立する
次に、基本方針3「次世代につなぐ財政基盤を確立する」についてでございます。
生産年齢人口の減少に伴う税収の減少や高齢人口の増加に伴う社会保障費の増加、公共施設などの社会インフラの更新など、財政状況は更に厳しさを増しております。
このような中でも、市民サービスを維持、向上させるため、そして未来への投資を行うためには、安定した財政基盤を確立することが重要です。
このため、国や都の補助制度の積極的活用、中長期的な債券運用、土地や建物の貸付や有料広告掲載による収入などによって、財源の確保を図ってまいります。
特に、「ふるさと納税」及び「企業版ふるさと納税」について、年々、受け入れ額が増加しております。
市では、ふるさと納税の募集を通じて、町田市の魅力や取り組みを市内外へ発信をしております。昨年、ホームタウンチームのFC町田ゼルビアがJ1リーグで躍進したことにより、全国で町田市の知名度を高めていただきました。このチャンスを生かして、より多くの方々に、町田市の特産品や取り組みに、興味や共感を持っていただけるように、取り組んでまいります。
「公共施設の再編」については、他自治体に先駆け、取り組みを進めてまいりました。物価や人件費の高騰、人口減少による歳入減少が見込まれるなど、乗り越えなくてはならない課題はありますが、施設の総量を減らしつつも、サービスの質の維持向上に向け、問題を先送りせず、一つ一つの課題を解決して、着実に取り組みを進めてまいります。
2025年度当初予算
以上のような考えで編成した2025年度当初予算規模は、
一般会計、1930億7541万円
特別会計、1374億2850万円
合計、3305億391万円
となっております。
2024年度の当初予算と比べますと、一般会計では約7.7%増、特別会計では約2.9%増、合計すると約5.6%増となっております。
むすびに
2025年度は、「まちだ未来づくりビジョン2040」と「町田市5ヵ年計画22-26」が4年目を迎えます。5ヵ年計画におきましては、目標の達成に向けた仕上げの時期として、そして、それぞれの取り組みを着実に進めるとともに、次の5か年を見据えて、改めてまちを描いていく時期でございます。
市政の運営にあたりましては、2006年の市長就任から私が最も大切にしてきた2つの志、「すべての世代の方々に生活の質の向上を実感していただく」こと、そして、「市民目線で行政経営改革を進める」こと、この志を常に持って臨んでまいります。
そして、変化の激しい時代、先行きの見えない時代の中にあっても、“人と人とのつながり”を大事にしていく。2つの志とともに、このことをまちづくりの基本姿勢とすることで、温かなつながりから幸せを感じることができるまち、更には、未来に期待や希望が持てるまちを実現していきたいと考えております。
これからも、市民の皆様に、まちの将来の姿を共有し、共感をいただきながら、一緒になって、丁寧にまちづくりを進めてまいります。そして、将来にわたって「町田に住んでよかった」、「町田で育ってよかった」と、誰もが思えるまちにしてまいります。
以上、令和7年度の施政方針を申し述べさせていただきました。各取り組みを進めるにあたっては、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。ありがとうございました。