令和5年度(2023年度)施政方針

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更新日:2024年2月29日

令和5年(2023年)第1回市議会定例会が開会され、石阪市長は2月22日の本会議で施政方針を表明しました。
ここでは、その全文を掲載します。

はじめに

2023年第1回町田市議会定例会の開会にあたり、2023年度の施政方針を申し述べさせていただきます。
議員各位並びに市民の皆様のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2023年度の市政運営の視点

それではまず、市政を取り巻く状況について、私の認識をお話しします。
新型コロナウイルスが、最初に感染報告されてから3年が経過しました。この間、ウイルスの変異と感染拡大を繰り返し、世界規模で社会経済に大きな影響を与えてきました。ここへ来てようやく、世界の多くの地域で新規感染者数は減少しており、国内においても同様の傾向であります。各地では様々なイベントが開催され、観光地では賑わいを取り戻すなど、ようやく明るい兆しが見えております。
こうした中、国は、5月から新型コロナウイルスの感染症法上の分類を、特段の事情が生じない限り、季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」とする方針を決定しました。これにより、家庭や学校、職場、地域など社会全体で感染対策の見直しを図ることとなり、日常生活を取り戻していくための新たなフェーズを迎えております。
一方、ロシアによるウクライナへの侵攻は未だに続いています。多くのウクライナ国民が国外に避難し、国内でも2000人を超える避難民を支援しております。異国の地で、避難生活を余儀なくされている現実を思うと、大変胸が痛みます。一刻も早く平穏な日々が戻ることを切に願っております。
そして、こうした社会情勢を背景とした原油価格の高騰や為替の変動の影響による急激な物価の上昇は、国内においても光熱水費や食料品といった生活必需品の価格にも及んでおります。1月20日に発表された12月の全国の消費者物価指数は、前年12月比で4.0パーセントの上昇となり、41年ぶりの高水準を記録し、市民生活に大きな影を落としております。世界的な動きとして様々な要因が重なっていることからも、経済情勢や国、東京都の動向を見極めながら、お困りの方々に支援の手が届くよう、地域のニーズや状況を的確に捉えていかなければならないと認識しております。
また、ここ数年の社会の動きを見ますと、コロナ禍でデジタル化が加速し、あらゆる分野でデジタルが基盤となる新たな社会では、世界が驚くほど近くなったと感じております。更には、SDGsのように世界規模の社会課題に貢献する活動が、行政や事業者においても盛んになっており、世界情勢の影響をより一層反映した社会に移り変わってきております。
“持続可能な社会の実現”が人類のテーマであり、共通の課題である中でも、地球温暖化による気候変動は、私たちの生活や自然環境、あるいは、生態系にも様々な影響を与えるなど、問題は深刻であり、今手を打たなければ取り返しのつかない状況です。国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを宣言しております。
町田市においても、2030年までに、2013年度と比べて、市内の温室効果ガスの排出を約33パーセント削減し、2050年には実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティまちだ」を昨年1月に宣言しており、一自治体として課題解決に貢献するため、取り組んでいるところでございます。
加えて、近年特に社会的にも重視されている“多様性の尊重”という考え方は、こうした共通の社会課題に対応していくためのベースであり、重要な要素だと認識しております。誰もが社会の主役であり、未来を切り開く当事者となって課題解決していくためには、一人ひとり生き方の違う人たちが、お互いを尊重し、認め合えるような土壌をつくること、すなわち「ダイバーシティ」が求められております。
他方、国内においては、人口減少や少子高齢化は一層切迫しております。特に少子化対策は喫緊の課題です。昨年、2022年の出生数は77万人と、統計開始以来、初めて80万人を下回る見込みであり、国の推計よりも8年も早いスピードで子どもが減っています。2015年に100万人を超えていた出生数が、7年ほどで2割以上減少している現状に、強い危機感を抱いております。
国は、この4月に子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」を創設します。これまで大人中心であった社会を、子どもの声や意見を聴いて子ども中心に変えていくとともに、省庁を横断して政策や取り組みを推進することで、少子化に歯止めをかけ、子どもや子育て家庭への更なる支援につなげていくための組織です。
少子化の根本的解決には、給付金の支給や収入の補填だけでは不充分です。若い人たちが子育てに前向きになるには、産み育てることを躊躇わせる社会の様々な制約を取り除く社会改革が伴わなければなりません。長時間労働の是正や、実質所得の向上、賃金格差の是正を含む女性の地位向上、そして男性が主体的に子育てに関わることのできる環境づくりなども必要な改革、緊急の改革だと考えています。こども家庭庁の創設が、そういった社会改革の足掛かりとなることを期待しております。

子どもの声や意見を聴くという点で、町田市では、国や他の自治体に先駆けて、「若者が市長と語る会」や「町田創造プロジェクト」などといった子どもの参画に取り組んでまいりました。
2021年12月には、「子どもにやさしいまちづくり事業」を実践する全国5自治体のうちの1市として、日本ユニセフ協会から承認を受けております。これは子どもの参画を推し進めてきたことが評価された成果でございます。
そして、昨年スタートした「まちだ未来づくりビジョン2040」は、子どもたちの思いも受け止めて策定した長期計画であり、これまでの子どもにやさしいまちづくりの取り組みの姿勢を継承しながら、子どもの視点でまちづくりを推進しているところです。
次に、子どもの数という点で市の状況を申し上げますと、年少人口の転入超過数は、約1700自治体の中でも近年トップレベルを維持し続けており、2022年においては、政令指定都市を除いて全国第1位に輝き、子育て世帯に選ばれております。しかしながら、子どもは年々減少傾向にあり、将来にわたって持続可能なまちであり続けるためにも、子どもを産み育てたい人たちの希望が叶えられるようなまちづくりに果敢に取り組むとともに、その輪を広げていかなければならないと考えております。
また、超高齢社会を迎えた我が国にあっては、現在総人口の29.1パーセントを占める65歳以上の高齢者の割合は、2040年には35パーセントを超える見通しであり、この傾向は町田市でも同様です。
高齢化の進展によって老老介護や8050問題などが社会問題化しております。地域の担い手、介護の担い手不足も顕在化している中では、今後より一層地域ぐるみで見守り合い、支え合える体制を強化していく必要があります。
半年先さえも予測が難しい、先行きの見えない社会状況が続いております。市の責務として積極的に歳入を確保するとともに、直面している多くの行政課題や社会変化に対応しつつ、未来を見据えた的確な選択と効果的な投資を行っていかなければなりません。そのため、その選択と投資を実行するとともに、他の自治体との比較をもって、一段上の行政サービスを提供し、市民の皆様の生活の質を向上させ、まちを活性化させていく必要があります。
まちづくりの主役は、暮らす人、働く人、訪れる人など、様々な「人」でございます。これからも市民の皆様と共に知恵と力を合わせてまちづくりを進め、「なんだ かんだ まちだ」、なんだかんだ言っても、やっぱりまちだが一番、と思えるまちづくりに取り組んでまいります。

2023年度の主要な施策

それでは、2023年度の主要な施策について、「まちだ未来づくりビジョン2040」に掲げる3つの「なりたいまちの姿」ごとにご説明いたします。

ここでの成長がカタチになるまち

1つ目は、“子ども”がキーワードの「ここでの成長がカタチになるまち」についてです。
子どもたちが楽しく健やかに成長していくためには、当たり前のように安全・安心な生活があり、拠り所となる居場所があり、自分の思いを自由に伝える機会があることが大切であると考えております。子どもを起点としたまちづくりを進めていくことで、子どもはもちろん、大人たちも共に成長し、幸せを感じられるようなまちにしてまいります。
そして、そのためには、今大人である私たちが10年後、20年後の未来の町田を担う子どもたちのことをしっかりと考え、責任を持って守っていくことが前提です。
この大人の責任を明確にするため、「(仮称)子どもにやさしいまち条例」を2024年1月に制定することを目指して検討してまいります。この条例は、まちづくりの理念を掲げるものであり、制定をきっかけとして、“子どもが幸せになるために、私たち大人には何ができるのか”について考えるような、例えば市内企業、あるいは経営者の皆様が、女性の地位向上や男性の育児支援などといった子育て支援を考える契機になれば、という思いを込めて制定するものです。
一方、子どもたち自身が、自分たちには何ができるのかを考えることも大事です。自分の思いを自由に伝え、“やりたい”ことを実現する機会といたしまして、2023年度から「まちだ若者大作戦」を実施いたします。子どもたちが日々の暮らしの中で持つ夢や思い、例えば、原町田大通りを通行止めにして子どもだけのお祭りをしたいなどといったことを行政が応援して形にする、そんな取り組みです。引き続き、子どもの参画を促し、子どもの意見を市政にいかしていくことで、「子どもにやさしいまち」を更に推進してまいります。
また、児童虐待等の予防をはじめ、実際に子どもたちを守るという意味においては、市の子ども家庭支援センターと東京都の児童相談所との連携がますます重要になってまいります。この度、多摩地域の児童相談所の管轄区域の見直しにより、新たに町田市に設置されるという素案が示されました。今後も引き続き、教育や子ども・子育て支援、母子保健に関する機能等の複合施設となる(仮称)子ども・子育てサポート等複合施設への設置を東京都に働きかけてまいります。
子育て中の親子にとって、遊んだり、学んだり、気軽に相談できる居場所が地域にあり、それらを選べることは満足感と安心感につながります。
子どもの居場所としまして、先月1月末には、市内5か所目となる常設型冒険遊び場「松葉谷戸冒険遊び場」がオープンしました。7月には、小山田地区に市内7か所目となる子どもクラブがオープンします。そして、成瀬地区では、今後新たに子どもクラブを整備するための準備を進めてまいります。
また、保育の場の充実としましては、この4月に南地区に認可保育所を開設いたします。さらに、2024年4月にも同じく南地区に認可保育所を開設できるよう準備し、当該地区で高まっている保育ニーズに対応してまいります。
病児・病後児保育施設につきましては、八王子市、相模原市に加え、この1月から川崎市と相互利用を開始しております。隣接自治体との連携を図ることで、より広域にわたる子育て支援が実現したことから、利便性が向上し、安心して子育てできる環境が整っております。

次に、現在進めている「まちだの新たな学校づくり」についてです。この取り組みは、子どもたち、さらにはこれから生まれてくる子どもたちが夢や志をもち、未来を生き抜く力を育むために必要な未来への投資と考えております。
最初に申し上げたとおり、町田市においても子どもが減少傾向にあり、今後も減少が見込まれております。このような中では、1学年単学級になる学校が増えてくると想定され、そうした場合でも教員の学校運営に関する業務が減ることはありません。また、教員不足や教員の多忙化が社会問題となる中、子どもの教育といった本来の業務がおろそかになる、そんな現場の声を受けており、このことが学校再編に乗り出したきっかけです。
「まちだの新たな学校づくり」は、子どもたちが1日の大半を過ごす学校での生活がより充実したものとなるよう、新たな教育環境を整備するとともに、教員が教育活動に専念できる環境づくりを進めることを、学校統合等に合せて実現する全国に先駆けた取り組みです。さらには、学校が地域活動の拠点としてより利用しやすくなることも目指してまいります。2023年度は、学校統合及び単独建替えに向けて、各地区に(仮称)新たな学校づくり推進会を設置し検討を進めるとともに、設計や地質調査といった準備を進めてまいります。
また、“心身ともに健やかに育つ”というところでは、「食」が重要です。成長期にある中学生全員に温かい給食を提供するため、かねてから検討を重ねてきた中学校給食センターは、いよいよ建設工事に着手いたします。
最後に、2024年度に改定の時期を迎える「町田市教育に関する総合的な施策の大綱」と「町田市教育プラン」につきましては、子どもにとって豊かな経験ができるよう、そして、子どもから大人まで、市民一人ひとりの多様な学びのニーズに応え、生涯を通じて学び続ける力を育むことができるよう、道筋を示してまいります。

わたしの“ココチよさ”がかなうまち

続いて、なりたいまちの姿の2つ目は、“くらし”がキーワードの「わたしの“ココチよさ”がかなうまち」についてです。
町田と言えば、商業のまちであり、学生のまちでもあり、そして、都心に程近いながらも豊かなみどりが広がるまちなど、様々な顔を併せ持つ“ちょうどいいまち”です。このまちが将来にわたって選ばれ続けるためにも、日常的に居心地のよさや住み心地のよさを感じられるようなまちにしてまいります。
こうした心地よさを叶える上では、交通の利便性が特に重要な要素です。一昨年末にルート選定された多摩都市モノレールの町田方面延伸につきましては、市内外の人の流れや都市構造そのものを大きく変える都市インフラと捉えております。早期実現に向けては、引き続き東京都をはじめ関係事業者との連携を図るとともに、モノレール延伸の効果を最大限に発揮してまいります。
そのため、都市骨格軸となるモノレール沿線の町田駅周辺、木曽山崎団地、忠生・北部の3つのエリアでは、「町田市都市づくりのマスタープラン」に基づいて、まちの構造や機能を再設定するプロジェクトを推進いたします。3つのエリアで、それぞれが持つ「都市的なにぎわいや活動」、「居心地のよい住環境」、「豊かなみどり・自然」の要素をいかした取り組みを進め、まち全体の魅力を高めてまいります。
特に、モノレールの新たな起終点となる町田駅周辺では、「商業地を多機能化・ウォーカブルなまち」にするプロジェクトを進めてまいります。具体的には、大規模店舗等の更新や土地の高度利用など、駅周辺の開発を進め、魅力ある駅前空間づくりに取り組んでまいります。そして、プロジェクト推進にあたっては市の組織体制を強化してまいります。また、原町田大通り、原町田中央通り、文学館通りは、より安全で快適に通行できるように整えることで、中心市街地一体を回遊しながら楽しめる空間にしてまいります。
加えて、中心市街地全体の活性化に不可欠な要素となるのが、町田駅から徒歩圏内にある、芹ヶ谷公園です。中心市街地全体の回遊性を高めるために、芹ヶ谷公園が人々をひきつける魅力的な場所となるよう、引き続き整備してまいります。
目指すは、「町田の公園といえば、芹ヶ谷公園」と言われるような、町田市を象徴する公園です。そのためにも、2023年度は、(仮称)国際工芸美術館の整備工事等に取り掛かり、着実に進めてまいります。そして、芹ヶ谷公園“芸術の杜”パークミュージアムとして、多様なアートカルチャーや豊かな自然を学び楽しむことができ、来園した方々の記憶に残り、何度も訪れたくなる新しい体験型の公園にグレードアップさせてまいります。
その他の駅周辺の再整備という点では、鶴川駅周辺・相原駅周辺のまちづくりも着実に進めているところです。鶴川駅周辺におきましては、北口広場に続き、駅舎、南北自由通路、南口土地区画整備事業の整備工事に着手いたします。駅舎と南北自由通路につきましては、鶴川駅開業100周年にあたる2027年度末での使用開始を目指してまいります。
また、相原駅周辺におきましても、町田街道から駅東口への新たなアクセス路と東口駅前広場を整備するとともに、駅前街区の再編整備に向けた協議を進めてまいります。
駅周辺をリデザインすることは、人々を呼び込み、賑わいをもたらします。加えて、まち全体の活性化という観点では、北部エリアの魅力向上も必要です。
忠生地域の町田市バイオエネルギーセンター周辺においては、昨年4月に温浴施設「町田桜の湯」をオープンしており、施設の西側に位置する最終処分場池の辺地区、峠谷地区、旧埋立地につきましては、「忠生スポーツ公園」として整備します。
最終処分場の西側に位置する池の辺地区につきましては、今年9月に、自由に遊べる広場やスポーツも楽しめる多目的芝生広場等を設け、先行して開園いたします。
また、東側の峠谷地区と旧埋立地につきましても、複数のスポーツが楽しめる場として2032年度の開園に向け、「町田市バイオエネルギーセンター周辺施設整備基本計画」を策定いたします。
最終処分場は、様々な世代が憩い、体力づくりもできる新たな賑わいのスポットとして生まれ変わってまいります。
加えて、スポーツを通じたまちづくりとしまして、旧忠生第六小学校の用地には、地域の皆様の健康づくりの拠点となる「(仮称)町田木曽山崎パラアリーナ」を整備してまいります。こちらにつきましては、パラリンピックのレガシーの継承を目的に、パラスポーツを「する」場・「みる」場づくりにも取り組むなど、障がいのある方々にとっても使いやすく、パラスポーツを身近に感じられるような体育館として、新たな魅力を創出してまいります。2026年度のオープンを目指して、2023年度は民間事業者とのコラボレーションによる整備手法を検討してまいります。

誰もがホッとできるまち

続いて、なりたいまちの姿の3つ目は、“つながり”がキーワードの「誰もがホッとできるまち」についてです。
性別も年齢も障がいの有無も関係なく、どんな生き方をしようともこのまちは受け入れてくれる、そう思えることが、多くの人の安心感を生んでまいります。時に緩く、時に密につながることで、互いに尊重し、認め合えるまちにしてまいります。
本議会に提出しております「町田市性の多様性の尊重に関する条例」におきましては、「町田市パートナーシップ宣誓制度」を位置づけ、性の多様性に対する社会的な理解を促進してまいります。
また、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、「(仮称)町田市障がい者差別解消条例」の制定を目指し、検討を進めてまいります。
こうした条例の制定をきっかけとして、すべての人が、互いに個性を尊重し、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に寄与してまいります。
地域で安心した生活を送っていくには、困りごとを気軽に相談でき、必要な時に必要な支援が受けられる体制を備えておくことも必要です。そのため、市内に順次「地域福祉コーディネーター」を配置し、困りごとの相談先が分からない人や、ひきこもり等で自ら声を上げることのできない人のもとにコーディネーターが出向き、必要な支援につなげていく体制を整えてまいります。
まずは、この1月から、相原地区及び小山地区にその活動拠点と相談窓口となる「まちだ福祉まるごとサポートセンター 堺」を開設いたしました。2023年度中に、鶴川地区に2拠点目を開設し、地域における福祉の困りごとの相談支援体制を強化してまいります。
さらに、つながりという点では、人と自然とのつながりにも注力してまいります。
里山をはじめとした豊かな緑は、市の大きな魅力であり、価値ある資産でございます。この恵まれた自然環境、とりわけ、まちだの里山と、それらを支えてきた農業を市としてもしっかりと守り、大切にしていかなければならないと考えております。そして、それらを未来に引き継いでいくためには、人と自然とが調和していくことが重要です。
このため、「住む人も 訪れる人も 居心地のよい まちだの里山」を目指し、地域住民や企業・団体等と連携して、山林や農地の再生・保全を行うほか、環境学習や観光・レクリエーションを通して里山をまるごと体感できる取り組みを進めてまいります。
小山田エリアにつきましては、来訪した方々と地域住民との交流や、木工体験、農とのふれあいなど、里山を身近に感じ、楽しむことができる交流回遊拠点の整備に向けて、2023年度に基本構想を策定いたします。
最後に、災害における備えという点では、地方自治体として町田市が担う「住民の生命・身体及び財産を災害から保護する。」という役割を認識した上で、自助・共助が最大限発揮され、まち全体の防災力が高められるよう、市としてしっかりと取り組んでまいります。
具体的には、「まちだ防災カレッジ」のポータルサイトやSNS等を活用して、防災に関する必要な知識を習得する機会を広く市民に呼びかけることに加え、屋外用テントを活用し、アウトドアと防災を融合した宿泊体験型の訓練も行うなど、“自分の身は自分で守る”“自分の地域は自分たちで守る”という意識の啓発に努め、自助・共助の力を高めてまいります。
一方、自分一人で避難することが難しい避難行動要支援者への対応についてもしっかりと備えなければなりません。発災時に、地域の助け合いの中で、速やかに避難や安否確認ができる体制を整えられるよう、関係者と協議を進めます。
また、いつ、どこで起きてもおかしくない自然災害に対して、事前に想定される被災規模を分析し、平時から復興体制や方針等を整えるなど、被災後に早急かつ的確に復興を実現していく備えをしてまいります。
今年は関東大震災から100年の節目を迎えます。昨年5月には東京都が、「首都直下地震等による東京の被害想定」を新たに公表しました。この想定によると、建物の耐震化等により、避難者数や帰宅困難者数が見直されており、各避難施設の備蓄物資等の適切な再配分が必要となってまいります。したがいまして、2023年度は、市内の避難施設ごとの避難者数を再推計するとともに、町田市地域防災計画を修正します。こうした取り組みを通じて、平時から備えていくことで災害対応力を強化し、災害に強い安心できるまちを築いてまいります。

みんなの“なりたい”がかなうまち

続いて、「行政経営の姿」である「みんなの“なりたい”がかなうまち」の取り組みについてご説明いたします。
改めて近年を振り返りますと、新型コロナウイルスの拡大や物価高騰といった世界的な動向は、目まぐるしく、そして、不規則に変化し、市内経済や私たちの日々の暮らしに至るまで、大きな影響が及ぶ状況が続いていると認識しております。
そういった中でも、市といたしましては、生活者・事業者の支援はもちろん、保健所機能の維持に向けた組織的な応援体制の構築やデジタル化など、関係機関とも連携を図りながら、個々の変化へ機敏に対応してまいりました。
一方では、これらの個々の変化への対応にも一貫性を持たせることができるよう、私の信念でもある経営品質の考え方をあらゆる行動の原理原則とし、市民満足と職員満足を共に大事にしながら、まちづくりを力強くしなやかに支える行政経営を進めていくことが大切であると考えております。
こうした想いや考え方を含め、市民の皆様と一緒に形にした「みんなの“なりたい”がかなうまち」というビジョンを胸に、経営基本方針に基づく行政サービス改革と経営基盤の強化に取り組むことで、町田市の持つ魅力や強みを生かした公共サービスを展開できるまちを目指してまいります。

共創で新たな価値を創造する

まず、具体的な内容として、基本方針1「共創で新たな価値を創造する」に関する取り組みです。「きょうそう」とは、「共に創造する」の共創でございます。
2022年度には、地域の「やりたい」を叶えるつづけるための市の体制として、「地域かがやき作戦本部」を立ち上げました。「地域かがやき作戦本部」においては、地域の居場所づくりや町内会・自治会の担い手不足など、地域におけるやりたいことや困りごとに関する相談を幅広く受け付け、関係機関へのコーディネートやマッチングを行い、個々の課題解決に向けた取り組みを後押ししております。
さらに、「地域かがやき作戦本部」では、市民・地域団体・企業・公的機関など、多様な主体の対話の場である「THE YORIAI」を開催し、自分ゴトとして地域課題を捉え活動する人を増やすことにより、地域における交流の促進や魅力の向上などにつなげるサポートを始めております。
このように、市役所が多様な人材の橋渡しを行い、地域活動の土台から支えていくプラットフォーマーの役割を果たすことで、地域における共感の輪を広げ、誰にとっても暮らしやすい地域社会を、市民の皆様と共に創り上げていきたいと考えております。

対話を通して市役所能力を高める

次に、基本方針2「対話を通して市役所能力を高める」に関する取り組みです。
私は、人同士のつながりを深め、一人の人間や一つの組織では到達し得ない成果を生み出していくには、対話の機会を継続的に持つことが重要であると考えております。
これまでも、庁内横断的に行政のDX、デジタルトランスフォーメーションを推進する“e-まち実現プロジェクト”では、ワーキング形式により組織間の対話を重ね、できることから速やかに、市民目線のデジタル化を進めてまいりました。これらを含めた市のデジタル化の取り組みについては、2022年度に「Tokyo区市町村DX賞」や「マニフェスト大賞 コミュニケーション戦略賞・優秀賞」を受賞するなど、各方面から、高い評価をいただいております。
また、新たに設置した「町田市デジタル化推進委員会」においては、外部有識者との対話を重ね、デジタル化の具体的な方策を示す「町田市デジタル化総合戦略2022」を策定してまいりました。
2023年度は、この戦略に基づく重点的な取り組みとして、LINEなどのオンライン行政手続プラットフォームをフル活用し、市民の皆様に利便性を身近に感じていただくともに、職員にとっても手間のかからない行政手続のDXを進めてまいります。
こうした取り組みの積み重ねにより、「人手のかかるサービスデザイン」から「デジタルベースのサービスデザイン」への変革を促し、誰もが豊かさを実感できるデジタル社会の実現を目指してまいります。
また、このほかの取り組みといたしましては、従来の自治体間ベンチマーキングとは異なる手法である「中核市ベンチマーキング」に取り組んでまいります。
私は、全国の各地域において、自主性・自立性を高めつつ、実情に応じた個性豊かな地域社会を創る先導役となる中核市と町田市とを比較することが、今後の町田市における市政運営において、大変有意義なものになると考えております。
そのため、「中核市ベンチマーキング」は2022年度の調査・研究段階から、2023年度は実践段階へとステップアップし、企画部門と事業部門による組織間の対話を通して、より戦略的な事業展開につなげてまいります。
このように、デジタル化の推進や自治体間比較を通じて、町田市をより良くしていきたいという想いを共有しながら、職員同士がアイデアや知恵を結集していくことで、更なるサービス改革と業務改善を進め、市民サービスの向上と市役所の生産性の向上を図ってまいります。

次世代につなぐ財政基盤を確立する

次に、基本方針3「次世代につなぐ財政基盤を確立する」に関する取り組みです。
具体的には、特別会計・公営企業会計の健全化、また、税外収入等による効果的な財源確保、そして、公共施設の再編や維持管理といった財政基盤を確立するための取り組みを着実に行ってまいります。
特に、公共施設の再編にあたっては、施設総量を圧縮しながらも、市民や地域との話し合いを踏まえ、多くの方々の「こうあってほしい」という想いを実現することで、公共サービスの維持・向上を図り、公共施設の「より良いかたち」をつくってまいります。
例えば、現在進めている(仮称)子ども・子育てサポート等複合施設の整備においては、子どもと親の両面から子育ち・子育てをサポートするとともに、民間サービスとのコラボレーションにより、誰もが気軽に立ち寄って思い思いの時間を過ごせるような施設にしてまいります。
同時に、このような公共施設の再編の機会を捉え、太陽光発電等の再生可能エネルギーの利用や使用エネルギーの省力化にも取り組むことで、より一層環境に配慮した公共施設を目指してまいります。
こうした取り組みを通じて、歳入確保や歳出削減、経営資源の有効活用を図り、未来の世代にも公共の利益をもたらす持続的な行政経営を行ってまいります。

2023年度当初予算

以上のような考えで編成した2023年度当初予算案の規模は、
一般会計、1684億2648万円
特別会計、1319億8967万円
合計、3004億1615万円
となっております。
2022年度の当初予算と比べますと、一般会計では約3.8パーセント増、特別会計では約1.1パーセント増、合計すると約2.6パーセント増となっております。

むすびに

まちだの未来をつくるために重要な役割を果たす、「まちだ未来づくりビジョン2040」と「町田市5ヵ年計画22-26」は、2年目を迎えます。
2023年度の市政運営にあたっては、2006年の市長就任から私が最も大切にしてきた「すべての世代の方々に生活の質の向上を実感していただく」こと、そして、「市民目線で行政経営改革を進める」こと、この2つの志を常に持って臨んでまいります。
まちづくりを進める上で、市民の皆様と町田市のなりたい未来の姿を共有しながら、その実現を共に目指していくことが、市政運営の基本でございます。
国全体としても人口減少の時代です。また、温室効果ガスの排出抑制など、経済にとっても環境制約の時代だからこそ、繰り返し申し上げている「子どもにやさしいまち」の実現のために、市民や地域企業の皆様が、互いに支え合い、それぞれの持ち場で具体的に活動している、そんなまちを目指してまいりたいと思います。そして、誰もが「町田に住んでよかった」「町田で育ってよかった」と思えるまちに発展させていく所存です。
以上、2023年度の施政方針を申し述べさせていただきました。各取り組みを進めるにあたっては、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。ありがとうございました。

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