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多摩のリーディングシティを目指すための調査研究 2024年度 研究成果
目指せ!多摩のリーディングシティ
他自治体との比較を通して町田市を多摩の「リーディングシティ」に押し上げるため、外部環境分析、情報収集、有識者ヒアリング、現地視察等の手段で調査研究を行い、提言をまとめました。
研究成果として、施策の方向性や実行イメージを示した「目指せ!多摩のリーディングシティ」を作成しました。
「目指せ!多摩のリーディングシティ」研究報告会
多摩のリーディングシティを目指すための調査研究にあたり、研究成果の報告を行うため研究報告会を開催しました。
研究報告会では、研究報告のほか、基調講演として藤枝市観光交流政策課課長・大久保幸廣氏および株式会社ゼルビア渉外部長・近藤安弘氏をお招きし、それぞれ「蹴球都市藤枝ーNext100スポーツツーリズムプロジェクトの挑戦ー」、「世界を目指して地域活性化に貢献する!FC町田ゼルビアのもう一つの目標」というテーマでお話しいただきました。また、大久保氏、近藤氏、市川所長、石坂市長によるトークセッションを行い、サッカーと都市の共創関係について意見交換を行いました。基調講演の動画を以下に公開していますので、ぜひご覧ください。
「都市間競争の勝ち筋を考える~多摩のリーディングシティを目指して~」研究報告会を開催しました
調査研究の目的
町田市未来づくり研究所では、調査研究「FutureMachida2050」において、不確実な将来を予測するため市に起こり得る4つの未来シナリオを描きました。予測されるシナリオや、日本の都市特性評価-Japan Power Cities2023(以下、JPC指標)の厳しい結果などを踏まえ、町田市がネガティブな都市要素を克服し、将来にわたって選ばれる自治体となるため、本調査研究は、他自治体との比較を通しながら、町田市を多摩の「リーディングシティ」に押し上げる提言を行うことを目的とします。
※JPC指標は、都市の特性を6分野86指標の構成要素で数値化し、客観的に評価した森記念財団都市戦略研究所による調査です。
調査研究の視点
町田市を多摩のリーディングシティに押し上げるために、伸びしろのあるJPC指標項目を分析しました。多摩地域内では上位であるが全国的には下位の指標である「女性就業者割合」や「休日の人の多さ」などは、伸びしろがある指標だと考えました。一方で、多摩地域内でも全国でも下位の指標である「付加価値額」「クリエイティブ産業従事者割合」「居住環境の満足度」などは克服することでリーディングシティに向かう可能性があると考えました。これらの分析をもとに、リーディングシティの目標像として4つの仮説を設定し、調査を行いました。
仮説1 | 働く女性の暮らしやすさに関するリーディングシティ |
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仮説2 | 休日のにぎわいに関するリーディングシティ |
仮説3 | ビジネス集積に関するリーディングシティ |
仮説4 | 団地再生に関するリーディングシティ |
JPC指標項目の4象限の分析
仮想ライバル市との比較調査
仮想ライバル市の設定
JPC指標において、町田市よりも上位にある多摩地域の自治体と多摩地域以外の郊外型の自治体を、人口50万人以下(政令指定都市と県庁所在地は除く。)、都心から概ね30km圏の郊外都市の条件で抽出した結果、多摩地域の5自治体と東京都以外の6自治体を選定し、仮想ライバル市としました。
選定した仮想ライバル市
- 多摩地域の自治体:八王子市、立川市、三鷹市、調布市、府中市
- 多摩地域以外の自治体:千葉県柏市、流山市、神奈川県藤沢市、愛知県春日井市、大阪府吹田市、兵庫県西宮市
注目したJPC指標における町田市の順位
仮想ライバル市12市の中での町田市の順位を確認しました。
注目した町田市のJPC指標の順位
※JPC指標の計算に用いたデータの出典や計算方法など、詳しい内容をお知りになりたい場合は、森記念財団都市戦略研究所ホームページ「日本の都市特性評価」から、指標の定義をご参照願います。
住民アンケートの実施
JPCの定量的指標だけでは測れない市民の評価などの定性情報について、仮想ライバル市と町田市の差を明らかにすることを目的に、各市の住民を対象としたアンケートを実施しました。
なお、アンケートの実施にあたり、町田市の若手職員(各部署から選出)によるワークショップを行いました。ワークショップでは、リーディングの方向性や重要となる指標の設定、その指標のランクアップにつながる評価軸を考え、調査項目に活用しました。
- 調査方法:インターネット調査
- 調査エリア:町田市および仮想ライバル市11市
- 調査期間:2024年6月20日~6月28日
- 調査対象:12市に住む20~69歳の男女6,194人(各市500人以上)
効果的な施策を実施するためのポイント
成功要因の分析やケーススタディ、有識者ヒアリングなどをおこない、4つの施策をより効果的に実施していくためのポイントを整理しました。
女性の就労支援 | 一般に、就労支援は就労希望者を対象とされるが、就労の意思表示をしていない女性の中には、様々な理由で働くことを諦めてしまったり、意思表示しにくかったりする環境下にある女性もいる。このため、働きたい意思表示をした女性だけを対象にすると、支援から漏れ落ちる可能性があるため、当事者の意識を変えるところにも手を差し伸べる必要がある。従って、女性就労の最終段階のマッチングの機会提供だけでは不十分で、前段階の支援から一気通貫に支援することで、マッチングの成功数も向上する。 |
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企業側の意識変革 | 女性自身への働きかけに加え、雇用する企業側に対しても意識変革を促す働きかけが必要である。女性がフルタイムの正社員だけでなく、短時間正社員や段階的に労働時間を増やすといった多様な働き方ができるよう、活躍・戦力化させてくれる志ある企業を増やし、地域全体の風土づくりにつなげていくことが大切である。 |
女性の暮らしやすいまちづくり | 女性の暮らしやすいまちには、都市の寛容性(多様性を許容する文化)があるといわれる。例えば、子連れの入店を歓迎するステッカーを貼ったお店が増えるなど、寛容性を可視化していくことも重要である。 |
防犯面 | 女性の暮らしやすさに関しては治安も重要であるが、犯罪発生率の低下だけでなく、「体感治安」が求められている。例えば、身近な犯罪被害の一つである自転車の盗難削減の一環で、放置自転車が減るなど、象徴的なできごとや、シンボルを通じて市民の認知度を高めることが効果的である。寛容性も治安の良さも、ともに市民に「伝わること」がポイントである。 |
駅前の集客強化と市内各地へのにぎわいの拡大 | 駅前の再開発は、機能更新だけでは先細りになってしまう。町田市にはいろいろなポテンシャルはあると思うが、何を特徴に打ち出していくか、外に向けたメッセージが必要である。 |
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スポーツを通じたにぎわいづくり | 地域の事業者が個々に取り組むだけでなく、連携組織(プラットフォーム)で一緒に議論できる方が望ましい。組織の代表者による会議体に加え、組織の代表ではないもののやる気のある人材が参加できる会議体も組織し、実行力のある人材を発掘することも有効。行政は関係者をつなぐ役割が期待される。 |
伝わる情報発信 | 情報発信する内容によっては、市民目線の情報発信の方が伝わりやすいものや、民間事業者の活動のように、行政の立場からは情報発信しにくいものもある。そこで、市民に一定の技術指導を行ったのち、市民の視点にたった情報発信をしてもらう。 |
次世代モビリティなどの新たな移動体系 | 自動運転技術は、法規制や道路事情などの理由で、商業利用には時間がかかっている。新技術に対する抵抗感が薄まり、社会的受容度を高めるためには、単年度の実験事業の繰り返しでは不十分で、複数年度にわたって腰を落ちつけて取り組む姿勢が求められる。 |
企業誘致と正社員雇用拡大 | 都心企業の支社・支店だけでは、成長が期待できず、本社機能の移転を働きかけるには、今よりも広いビジネス床が必要になる。誘致にあたっては、オフィス仲介業者が企業の移転情報を把握しているため活用する。なお、大企業の本社移転は5~10年スパンの計画となり、オフィスビルが完成する前から働きかけが必要になる。自治体が企業誘致でとりうる施策は、特区などを通じた規制緩和や税制優遇、その他創業企業向けの支援などが挙げられる。企業誘致を図るのであれば、どんな企業を市内に集積させたいのか、市としての意思表示が必要である。 |
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オフィス床の確保 | オフィスビルの誘致にあたり、一定の評価ルールに基づいてデザインに配慮したビルを建築した場合には、容積率の緩和などのインセンティブを提供する。これにより、魅力的なオフィス街の形成を促進する。優れたデザインの最新オフィスは、働く場所としての競争力を高め、企業誘致における都市間競争で大きなセールスポイントとなる。 |
創業支援 | 「新規事業は既存事業との掛け合わせで生まれるもので、スタートアップ企業を成長させるためには既存企業・産業の力が不可欠」であるとの指摘を踏まえると、起業支援は起業したい個人だけを集めて支援するよりも、新規事業をやりたい企業や、課題を提示し一緒に解決したい企業なども取り込んだ方が、スタートアップ企業の成長も加速させる可能性が高まる。 |
住宅以外の利用 | 人口減少が避けられない団地に関しては、住居規模の調整も必要という認識がある。住居を事業その他の用途に転用することについては、建築基準法の変更手続きや既存住民への影響の点などから、住宅管理会社としてはハードルがある。しかし、団地再生後に生まれた余剰分の土地活用に関しては、住宅以外の建築物も可能性がある。団地は全面建て替えか、今あるストックをリノベーションで活用するのかの選択の過渡期に来ており、住宅管理会社も課題も抱えているため、定期的に情報交換する機会(プラットフォーム)を設け、必要に応じてメンバーを加えながら、テーマに応じて具体策を検討する。 |
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新たな公共交通手段と連動したまちづくり | 新たな公共交通手段を通じたまちづくりは、まちの人の流れを変え、商業施設の集客アップや利便性が高まった地域の地価上昇などの経済効果を発揮している。公共交通に基礎をおいた都市開発は、自動車依存による無秩序なスプロール化に比べると、環境に優しく持続可能な構造に再編していく点で、有効な手段と考えられている。 |
環境美化の取組 | 市街地と郊外では清潔度が異なることをヒントに、重点エリアを絞って環境美化に努めることが有効である。アプリを使ってゴミの収集成果を可視化したり、集客イベントにあわせて一斉キャンペーンを行ったりして、結果を体感してもらうなど市民に伝えることが重要で、実態としてまちの美化の状況改善だけでなく、伝え方についても工夫するとよい。 |
町田市のありたい姿と課題とは
調査結果をもとに、ありたい姿の仮説のブラッシュアップを行いました。当初の仮説で掲げた4つのテーマのうち、「働く女性の暮らしやすさに関するリーディングシティ」を可能にするためには、市内にビジネスの集積・振興が不可欠であり、また「ビジネス集積に関するリーディングシティ」と通底する課題が多かったことから、ありたい姿を3つに再整理しました。
再整理された3つのありたい姿と課題
施策の提案
再整理された3つのありたい姿と課題に対し、解決するための施策を提案しました。
また、特に重要なものについては、押し出すべき施策としてリーディングプロジェクトと題しました。
1.まちのにぎわいのリーディングシティ
具体的なありたい姿
- スポーツ観戦で町田市を訪れた人たちが、市内の飲食店を利用したり、市内の観光地にも足を延ばしたりして、地域に経済的な利益をもたらす。
- 駅前再開発により映画館等を整備し、市内外の来訪者の受け皿を強化するとともに、市内の観光施設とのアクセスも強化し駅前のにぎわいを市内各地に広げる。
- 市外から町田市を訪れた人に、安全安心で、暮らしやすいと感じてもらえる。
駅前に新たな集客機能の誘導 | 駅前再開発にあわせ、映画館や、音楽・演劇ホールなどエンターテイメント施設を導入。 |
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新たな交通手段の導入を含む交通利便性の向上 | ライドシェアや自動運転バスなどの次世代モビリティの活用。 |
効果的な情報伝達のための広報戦略立案 | 現在運用中のSNSアカウントについて、広報効果の観点から集約や見直しを図るとともに、ターゲットを意識した効果的な広報活動の展開。 |
都市の寛容性の向上 | まちの寛容性の象徴として、ベビーカー置き場がある、バリアフリーになっている等、子連れでも入店しやすい雰囲気で寛容性のある店舗を拡大。 |
リーディングプロジェクト「サッカーの集客力を地域経済につなげる仕組みづくり」
- FC町田ゼルビアの試合において、試合観戦に訪れた人たちが、町田駅周辺の飲食店や商店街で消費していないことが分かりました。そこで、試合観戦に訪れた人たちに対し、市内で消費してもらう仕組みをつくります。
- アプリなどのデジタルツールを使って、ホームゲームの開催に合わせた市内のイベント情報や飲食店情報を積極的に提供し、個人消費を促します。
- 市と市内関連事業者との連携会議を組織し、連携することで、一体感のあるもてなしができるまちになります。
2.働きやすい環境づくりのリーディングシティ
具体的なありたい姿
- 企業から「町田市はビジネスに適したまちである」と認識され、市内に立地する企業や、起業希望者が増加する。
- 市内に企業が増えることにより若者の雇用機会も増え、大学等を卒業するタイミングで市内の若者の人口が大きく減少してしまう現状が緩和される。
- 子育てなどを理由にキャリアを中断した女性も、スキルアップの機会を得ることにより、付加価値の高い仕事でいきいきと働ける。
- 柔軟な働き方を受け入れる企業を増やし、女性が働きやすい職場を拡充する。
駅前再開発に合わせたビジネス床の確保 |
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市内企業の短時間正社員のルールづくりと受け入れ促進 |
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就労に向けたシームレスな支援 |
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リーディングプロジェクト「町田版スタートアップ・エコシステムの実現」
- 地域全体で起業希望者や企業が新しいビジネスを創出することを目指し、5段階に分けたサイクルで支援します。
- 起業にチャレンジする人を増やすため、情報発信を通じて各種支援制度やプログラムの認知度を高め、母集団形成に取り組みます。
- スタートアップ企業の育成には既存企業・産業の力も必要なため、個人の起業希望者だけでなく、既存の企業も支援対象とします。
- 小田急沿線地域の大学や企業も含めて利用できる、開かれたエコシステム(起業家、投資家、教育機関、自治体などが連携するシステム)を構築し、将来的には拠点整備を行い、「起業家にやさしいまち」になります。
3.団地再生に関するリーディングシティ
具体的なありたい姿
- 従来の暮らす場所としての団地から、楽しむ場所・働く場所など多面的な可能性を取り込み、団地が抱える諸問題に先鞭をつける。
- 新しい交通機関の開通によって暮らしやすくなり、若い世代の入居者が増えることで、団地の空き室の増加や高齢化問題が改善される。
- 象徴的な街路が整備されるとともに、市民の手により清潔に維持され、市民の団地に対するイメージが改善する。
事業者間で団地について語り合うプラットフォーム形成 |
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多摩都市モノレール・小田急多摩線の延伸に向けたまちづくり |
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リーディングプロジェクト「アート&ワークで団地の多機能化」
- 市内に大学が多いという特性を活かし、芸術系を専攻する学生などを対象に、アトリエなどの創作活動に使用・改装できるよう制度を整備します。
- シェアオフィスや、自宅と職場兼用のスモールオフィスとして、会社を始めて間もない規模の小さなスタートアップや、個人事業主などに提供することで、団地の多機能化を目指します。
- 現在、団地は全面建て替えか、今あるストックをリノベーションで活用するのかの選択の過渡期に来ており、町田市が団地活用についての方針を示し、関係機関と定期的に意見交換する機会(プラットフォーム)を設け、具体策を検討することも必要です。