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広報まちだ2025年1月1日号 2025年新春座談会
だれもがホッとできるまち(全文掲載編)
町田市では、昨年「町田市子どもにやさしいまち条例」、「町田市障がい者差別をなくし誰もがともに生きる社会づくり条例」が施行されました。そこで2025年広報まちだ新春号では、ともに10代で町田市出身のシンガーソングライターLeinaさん、大学生でモデルとしても活動中の玉置陽葵さんをゲストに迎えて、“だれにとってもやさしいまち” “だれもが暮らしやすいまち”について石阪丈一市長と語っていただきました。
座談会の様子(左から玉置さん、Leinaさん、石阪市長)
対談者プロフィール
Leinaさん
町田市出身の19歳でシンガーソングライター。楽曲、アートワーク、映像作品などのすべてをセルフプロデュース。人の弱さや醜さ、美しさ、儚さを描写する歌詞と心に響くメロディーが魅力の実力派。
玉置陽葵さん
市内在住の大学1年生。SNSを通じて、日常生活を前向きに楽しむ様子を発信し、同世代を始めとする多くのフォロワーから支持される。障がい者専門の芸能事務所に所属し、モデルとしても活躍中。
新春対談全文
活動のきっかけは、だれかの力になりたい
(以下、敬称略)
石阪 明けましておめでとうございます。Leinaさんはシンガーソングライター、玉置さんはSNSでの発信やモデルとして活躍していますが、どのように活動を始めたのですか?
Leina 作詞作曲を始めたのは2019年の3月くらいで、中学2年生の時でした。インスタグラムに投稿していたら音楽業界の方の目に留まって、同年11月にインディーズデビューをしました。歌を作り始めたのは、南地域にある子どもセンターの「ばあん」にギターがあって、職員さんに弾き方を教えてもらったことがきっかけです。「ばあん」に通い始めたのは小学1年生から。おもちゃもあるし、音楽スタジオだってあるし、知らない子と友達になれる、なにより職員さんが温かくて、夢のような場所でしたね。音楽は、孤独を感じるたびに私に寄り添ってくれました。だから私も音楽でだれかに寄り添いたいという思いが音楽活動の軸になっています。
玉置 私もスタートはSNSでの発信です。高校に入学するタイミングで自分の障がいのことなどを投稿し始めました。私自身が他の障がい当事者のSNSを見て力をもらっていたことや、母が私の病気が分かった時に障がい当事者のSNSを見て前を向けたと話していたこともあって、自分もだれかの力になれたらいいなと思ったのです。ちょうどその頃、障がい者モデルのオーディションを見つけて、モデルという人目に触れる場所にいるからこそ届けられることもあるのではないかと考え応募しました。
昨年はSNSやモデルの活動以外にも、教育関連のシンポジウムに登壇したり、都立高校を訪問して車椅子の体験をしてもらうようなインクルーシブ体験プログラムを立ち上げたりと、新しいことに次々と挑戦した年でした。
自然が豊かでリラックスできる だからまちだが好き
石阪 玉置さんもLeinaさんも町田市出身なので、町田の好きなところについても教えてください。
玉置 お気に入りのスポットは、高校の通学路にあった町田シバヒロです。友達と学校帰りに寄って町田シバヒロでおしゃべりをして帰っていたのは、高校時代の楽しい思い出です。それから、駅前にある商業ビルのプリクラコーナーも好きで高校生の時は通い詰めてましたね。町田は駅周辺に商業ビルがたくさんあって、欲しいものがなんでもそろいますし、ちょっと離れれば自然が豊かで、大きい公園もたくさんあるところが魅力です。
Leina その駅前のビルには私もよく通っていました。人気の服屋さんもあって町田の女子高生の聖地ですよね。公園や緑が多くて、ゆったり過ごせるのは町田のいいところだと私も思います。そうそう、町田の人はだいたい町田が好きなところも素敵ですよね。
石阪 Leinaさんは、「ばあん」について触れていましたね。「ばあん」のような子どもセンターが各地域にあって、中学生や高校生にも来てもらえるよう夜9時まで開館しているのは町田ならではの取り組みです。
玉置さんが言うように、公園や芝生はリラックスできるし、伸び伸びした気持ちになれますよね。2023年に完成した忠生スポーツ公園には、町田シバヒロの倍以上の約1万3000平方メートルの広大な芝生広場があります。町田には、木登りや穴を掘っての泥遊び、基地づくりなど、子どもが自由に遊びを考えて楽しめる冒険遊び場、いわゆるプレイパークも常設型が5か所あります。子どもから大人まで自然を身近に感じて暮らせるのは町田の大きな魅力でしょうね。
居場所があることが安心感につながっていく
石阪 昨年5月に「町田市子どもにやさしいまち条例」が、10月に「町田市障がい者差別をなくし誰もがともに生きる社会づくり条例」が施行されました。簡単な言葉で説明すれば、これらの条例は、子どもや障がいのある方々の居場所を大切にする条例です。居場所とは心のよりどころになる場所で、“みんなにやさしいまち”とはだれにとっても居場所があるまちだといえるでしょう。私が子どものときに夢見ていたのは、自由に空を飛ぶこと。なににも縛られたくなかったし、とにかく自由に憧れていたんです。それは今でも変わらず、人は自由に生きることが最も優先されるべきだと思っています。二つの条例の究極の目的は、子どもや障がいのある方が、自由に生きるための選択肢をたくさん用意すること。いろいろなタイプの居場所、人と出会える機会、活躍できるチャンスが豊富にあれば、自分にぴったりなものが見つかるのではないでしょうか。
Leina 確かに、私にとって「ばあん」は大切な居場所でした。デビュー曲は「ばあん」で作った作品です。「ばあん」には子どもによる委員会があって、子どもたちが自らお祭りを企画していました。ゲームのアイデアを出したり、工夫を凝らしたり、みんな輝いていましたね。
石阪 任せると力を発揮してくれますよね。2023年度から、町田市では「まちだ若者大作戦」という事業を実施しています。子どもや若者の「やりたいこと」を市が後押しする事業で、場所や補助金は提供するし、必要ならお手伝いもするけれども、余計な口出しはしませんというのが基本スタンスです。高校生世代から25歳までの若者が町田薬師池公園四季彩の杜西園の展望広場で野外音楽フェスを開催して大盛況でした。広報まちだの特集号を若者の手で作る「広報まちだジャック計画」も実施しました。記事のアイデア出しから、取材、原稿執筆、デザインまですべて任せて大丈夫なのか不安がありましたが、ふたを開けてみれば若い人たちの自主性や感性が発揮された、とても面白い広報紙が完成しました。
玉置 私の居場所になったのは、高校の友人たちとの関係です。中学生までは引っ込み思案で、自分の障がいをオープンにすることに抵抗がありました。でも高校に入って本当に大好きな仲間に出会って、自分の障がいを気にせず、気を使いすぎずに付き合える人間関係をつくれて、そこが心のよりどころになりました。例えば、今までだったら諦めていた階段しかない2階にあるお店でも、「ちょっとお願い」とみんなに支えてもらって上がり、カフェを楽しんだり、頼れる友達がいることで世界が広がった感じがします。
石阪 そう、居場所のあり方って1つではないですよね。場所だけでなくて、人との関係であることも多い。だからこそ人と出会える機会も含めて、できるだけたくさんの選択肢があることが大切なのだと思います。
理想のまちは、なんとかなるまち!?
石阪 今回の座談会のテーマは、“だれにとってもやさしいまち” “だれもが暮らしやすいまち”です。玉置さんとLeinaさんにとって、それはどのようなまちですか。
玉置 「なにかあってもなんとかなる」と思えるまちです。障がいがある人は外出時に「困ったときにどうしよう」「助けてくれる人がいるか不安」と心配しがちなのですが、なにかあったら助けてくれる人がいると思える環境があるだけで大きな安心につながります。以前の私は人に頼ることが苦手で、困ってもだれかに手助けをお願いできなくて車椅子で外出することがほとんどできませんでした。でも勇気を持って一歩踏み出したら階段や段差で助けてくれる人がいて、そのことで前向きな気持ちになれました。なんとかなるっていうのは、障がい当事者だけでなく、日常生活で困ることはそれぞれあると思うので、そういう時に人とのつながりが助けになるなと感じています。
Leina すべての人が生きやすさを感じるまちではないかと思います。マイノリティーだったり、ひとり親で大変だったり、経済的な理由でいろいろ我慢しなければならないなど、生きにくさを抱えている人は少なくないですよね。どんな社会ならそういう人たちが生きやすさを感じられるのかと考えたら、それは、一人ひとりの個性が認められて、尊重される社会ではないでしょうか。漠然とした答えだけれど、だれもが未来に希望や可能性を感じて、やりたいことに挑戦できるまちであればいいなと思います。
市長 町田がもっといいまちであるために、行政や社会にやってほしいことや望むことはありますか? 若い人の考えをぜひ聞かせてください。
Leina 育った環境とか、障がいのあるなしに関わらず、町田で暮らすすべての子どもが、いろいろなことに挑戦できる、なんでもやりたいことにチャレンジできるまちになればいいなと思います。困難を抱えているから我慢するとか、諦めるのではなくて、だれもがなんでもチャレンジできる環境があることは、生きやすさにもつながるのではないでしょうか。
玉置 障がいのある人に対して、柔軟な対応ができるまちであればいいなと思います。障がい者といっても身体の状態や環境は人それぞれで、ニーズにも違いがあります。障がい者としてひとくくりで見るのではなくて、一人の人として関わるというスタンスって大切だと感じています。それから、この人は障がい者というフィルターがかかってしまうと、障がい者としてしか見られなくなってしまうこともありますよね。その人の中で障がいは一部分でしかないから、他の部分も見てほしいというのは常々思っています。
石阪 お二人の話を聞いていて思うのは、住みやすいまちであるために“気付く”努力を怠ってはいけないということです。生きづらさを抱えている子や、障がいがある人が目の前にいたら、なにに困っているのか気付くこと。そして気付いたら見過ごさずに、自分がやれることを探す。社会にとっても、行政にとってもそれはとても重要だと思いました。
暮らしやすい社会のために自分だからできることがある
石阪 先ほどは社会や行政に望むことを伺いましたが、では、理想のまちや社会を実現するために、自分たちができると思うことや、やっていきたいことはありますか。
Leina 選挙に行くことは私たちができる大きなこと。だから、選挙の日にはSNSで「今日は選挙に行こう!」と呼び掛けているんです。私は音楽を通してさまざまなメッセージや思いを表現してきました。それはこれからも続きます。もっと勉強を重ねて、政治とか社会に関心が向くような発信をしたり、世の中がいい方向に動くように楽曲を含めて言葉にしていくことが私にできることだと思います。
玉置 SNSでの発信やモデル活動などで、障がい当事者である私が積極的に表に出ていくことが私にできることなので、それを続けて、見逃されがちな当事者の声を拾ってもらえる機会を増やしていきたいですね。自分の声だけでなく、当事者がどんな思いを持っているのか、一人ひとりに寄り添って聞いたうえで、それらの声も発信できたらいいなと考えています。
コンサートやトークショー 意欲的に挑戦する2025年に
石阪 今年の抱負について伺います。なにか挑戦したいことはありますか?実は、私には温めている思いがあります。町田には1978年に開館した800人規模の市民ホールがありますが、2000人、3000人収容できる本格的なコンサートホールがありません。大規模ホールを誕生させるプロジェクトを始動したいですね。
Leina 実現できたら、ぜひライブをしたいです。今年もこれまでと同様に自分がよいと信じる音楽を届けていきたいし、アーティストとしても、人としても成長していきたいですね。3月には横浜にある2000人収容のライブホールでコンサートをすることが決まっています。一歩ずつステップアップしていく中で頑張っていきたいです。
玉置 市長が選択肢の話をされていましたが、私にはずっと持ち続けている「障がい者の選択肢を広げていきたい」という大きな夢があります。選択肢といっても、本当にいろいろあると思っていて、当事者の方だと就職や進学だけではなくて、ただ出かける・遊びに行くだけでも行ける場所が少なかったり、本当に選択肢が限られていると感じています。そこの選択肢を広げていきたいなっていうのが一つの大きな目標としてあります。その第一歩として、今年は講演会やトークショーなど話す機会を増やして、当事者としての思いを届ける活動に軸を置くつもりです。
まちだも、世界も、あなたも無限の可能性に満ちている
石阪 町田の未来を背負って立つ、子どもたちや同世代の方へのエールをお願いします。
玉置 いろいろな経験をして欲しいと思っています。私自身も過去に障がいがあることが壁になって挑戦できなかった経験を何度もしてきました。でもその中でいろいろな人との出会いを通して、今までできないと思っていたことができるに変わった瞬間をたくさん経験してきました。それがどんどん自信にもつながっていくし、また次につながっていくと思います。
ハンディキャップがある人も、ない人も、いろいろな挑戦や経験をしてほしいですね。一旦は諦めなければならなかったとしても、「なんとかなる」という気持ちでなにかを変えてやってみればできるかもしれません。目の前にチャンスがあるなら、どんどんつかんじゃいましょう!
Leina 振り返ると我が家は楽器やおもちゃをふんだんに買い与えてもらえる環境ではなかったけれど、音楽が好きという気持ちだけでやってきました。今、苦しい状況にあったとしても、世の中は可能性に満ちあふれていることをぜひお伝えしたいですね。助けてくれる人だっているし、なんでもできるし、なんにでもなれます。大切なのは根拠のない自信を持つことと夢を信じ込むこと。信じるってすごく難しいし、時にくじけそうになる時もあるけど、やっぱり自分を信じ込んで、自分と向き合って何かを目指せば、きっとそこにたどりつけると思うから、私も夢を追っている途中なので、一緒に頑張りましょう!
市長 大きい夢でも、小さい夢でも、夢があったらなんとかなる!いろいろなことを経験していってほしいですし、なんでもできるし、なんにでもなれるという気持ちを町田の若い世代が共有してくれたら嬉しいですね。その思いをサポートできるよう、これからも町田市では、だれにとってもやさしい、だれもが暮らしやすいまちづくりを行ってまいります。本日はありがとうございました。