アフターコロナにおけるこれからの郊外都市のあり方に関する調査研究 2022年度 研究成果

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更新日:2023年4月17日

アフタ―コロナの町田のこれから~新しい郊外都市の姿~

2022年度は、2021年度に策定した「町田市未来シナリオ」(2050年の未来の町田市の姿)を踏まえた上で、アフターコロナ時代の郊外都市に求められている機能を把握し、今後取り組むべき施策の方向性および具体的な施策を市に提言することを目的に調査研究を行いました。
2022年度の調査研究では、コロナ禍における社会変化から6つの調査仮説を立案し、外部環境の変化・トレンド、町田市の現状把握、転入者アンケート、有識者ヒアリング・先進地視察などの調査結果から、仮説に基づく分析を実施しました。この分析をもとに、今後取り組むべき施策の方向性を整理しました。2022年度の研究成果として、「アフタ―コロナの町田のこれから~新しい郊外都市の姿~」を作成しました。

「アフタ―コロナの町田のこれから~新しい郊外都市の姿~」研究報告会

本調査研究の研究報告にあわせ、「アフタ―コロナの町田のこれから」について紐解くシンポジウム(研究報告会)を開催いたしました。
研究報告会では、施策提言のほか、基調講演として株式会社ソーシャル・エックスの伊藤氏をお招きし、「公民連携でつくる新しいまち」についてお話しいただきました。また、伊藤氏、市川所長、石阪市長によるトークセッションを行い、これからの町田のあり方について意見交換を行いました。研究報告会の動画は以下に公開していますので、ぜひご覧ください。

調査研究の概要

本調査研究は、昨年度策定した「町田市未来シナリオ」(2050年の未来の町田市の姿)を踏まえた上で、アフターコロナ時代の郊外都市に求められている機能を把握し、今後取り組むべき施策の方向性および具体的な施策を市に提言することを目的としています。これまでに、コロナ禍における社会変化から6つの調査仮説を立案し、外部環境の変化・トレンド、町田市の現状把握、転入者アンケート、有識者ヒアリング・先進地視察などの調査結果から、仮説に基づく分析を実施しました。この分析をもとに、今後取り組むべき施策の方向性を整理しました。

調査研究のフロー

調査仮説の立案

コロナ禍における社会変化を、「人口移動と暮らし方」「新しい生活習慣下での働き方」「シェアリングサービスの普及」「交流・娯楽・消費行動」「交通需要の変化に対応した新しい交通体系」「行政と民間事業者との連携」の視点で分析し、6つの調査仮説を立案しました。

仮説1:魅力的な郊外生活の創造

通勤移動の重要性が低下するなか、自然環境を活かしクオリティの高い生活を提案できれば市民のプライドにも寄与するのではないか。

仮説2:ヒューマンリソースの多様な活用

テレワークの経験から積極的に場所や時間に縛られない働き方が可能となり、潜在化していた労働力を活かせる場面が増えるのではないか。

仮説3:シェアリングの拡充

町田市内のコワーキングスペースは、多様な人材の活躍を支え、企業との連携の創出など、働く人が活気づくまちに変われるのではないか。

仮説4:エリア・アントレプレナーの活躍

外出したくなるまちには変化が必要であり、街並みを更新しやすくなるようリノベーション支援や飲食店等の開業支援が有効ではないか。

仮説5:MaaSの伸展

路線バスが減便する中、外出需要に応えるため、オンデマンド型の自動運転バスなど、新しい移動手段が普及するのではないか。

仮説6:公民連携の推進

仮説1から仮説5の具体的展開に際して、市民の創造力を発揮できればより面白いまちになるのではないか。

調査結果のまとめと施策の方向性

仮説1:魅力的な郊外生活の創造

外部環境に関する情報の収集等

  • 東京都では、都内の他市区町村や都外からの流入が減った反面、市区町村内での移動が活発化。
  • 東京都では、都立公園の利用者の増加、市民農園数の増加など、身近な自然環境が再評価。
  • 国の政策としてデジタルの力を活用した魅力的な地域づくり、持続可能で機動的な都市設計、地域社会のデジタル化が進行。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 買い物や飲食だけでなく、住む、働く、学ぶ、体験する、交流するなどまちの多機能化を図り、居心地の良い場所がたくさんあり、滞留したくなるウォーカブルなまちを目指し、公共空間利活用の実証・制度化が進行。
  • 町田駅周辺の人出の状況はコロナ前の水準に回復、市外からの流入はコロナ前の-10%以内まで回復など、人出は戻りつつある。

転入者アンケート

  • 町田市への転入者は10歳代から20歳代・単身者・30歳代以下ファミリー層が増加、通勤先は東京23区の割合が増加。
  • 転入のきっかけは「住宅の都合」「生活環境の改善」が増加する一方「仕事の都合」は変化なし、「交通の利便性」の重視度は低下。
  • 転入の理由としてコロナの影響があった人は全体では約3割、23区からの転入者では約4割と特に高い。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • テクノロジーを活用した新しい街のあり方として、サステナブル・スマート・タウンを謳う事例がある。発電・蓄電、電力使用量の見える化、街の見守りカメラ、カーシェア、自動配送ロボットなどデジタル技術を駆使した最先端の暮らしを提供。コロナ禍でも住民同士の交流・コミュニティ活動を展開。
  • 新たなタウンマネジメントの仕組みを運用する事例がある。敷地にあるすべての戸建団地管理組合やマンション管理組合がマネジメント組織に加入。まちづくりの中核である住民コミュニティ部会は、住民がリーダーとなり、賑わいづくりに自走。

新たなタウンマネジメント組織のイメージ

施策の方向性

市民のQOLを高めるため、テクノロジーとフィジカルのバランスに配慮しながら交流や心身の健康、自立を支える生活環境を実現する。

仮説2:ヒューマンリソースの多様な活用

外部環境に関する情報の収集等

  • コロナ禍によりテレワークを導入した企業は全体の3分の2まで上昇。
  • コロナ禍において、特に女性の就業者数のマイナス幅が大きい。
  • コロナにより大きな打撃を受けている飲食・宿泊業は、他産業に比べ、女性非正規雇用者の占める割合が過半数と大きい。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 東京都の有効求人倍率は2021年5月に最低となり、その後回復、直近6ヶ月は1.4から1.5を推移。一方町田市では、フルタイムが0.6程度、パートタイムは0.5から0.9と、低い状態が続く。
  • 東京都や全国と比較すると、町田市の女性の就労率は低い水準。
  • 周辺の人口20万人以上都市と比較すると、町田市は女性の未就業率が高い一方、最終学歴は大卒以上の未就業者の割合が高い。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • 女性の就労機会を創出する取組がある。高単価のテレワークが可能な女性のためのリスキリング教育の提供や、就労先となる企業と組み出口の確保などを実施。町田市は未就業女性の割合が高いことから潜在需要が見込まれる。

女性の就労機会創出の取組例

  • 新たな雇用を創出する取組がある。テレワーク施設を核として、小規模版なBPO(業務プロセスの外部委託)業務をテレワーカーと展開。主に女性の就労機会を創出。

テレワーク施設を核とした就労機会創出の取組例

施策の方向性

組織に属さない働き方や、時間・場所等に制約されないしなやかな働き方に対する潜在ニーズに応え、社会全体の生産性の向上を図る。

仮説3:シェアリングの拡充

外部環境に関する情報の収集等

  • 東京都のコワーキングスペースは600ヶ所を超え、9割は23区にあるが、市部では町田市が最も多い。
  • コワーキング施設は、保育施設の併設やコールセンター業務対応など設備の充実や、創業支援セミナー・交流会の開催などソフトの充実で差別化・付加価化。
  • 公共の未利用地を、シェアサービス会社を通じて有料駐車場にし、路上駐車問題を解決したり、未利用の公共空間を民間の運営事業者と組んで創業支援の場に活用したりする例がある。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 町田駅周辺の商業地域にコワーキングスペースの集積がみられるほか、南町田駅や住宅地にも立地。
  • 市内コワーキング施設のうち、登記利用可能な施設が半数。起業コンテストや交流会などの機能をもつ施設もある。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • コワーキングスペースの立地のポイントは人の流れがあるまちであること。人材採用では出社しない働き方が好まれるなど、働き方も変化しており、コロナ禍が落ち着いた後も、高い需要が続くと見込まれる。
  • コワーキングスペースは二極化しており、シンプルな作業場所としての機能のほかに、交流拠点として新たな連携・スタートアップを生む機能も求められている。
  • テレワーカーの活動拠点でもあるコワーキングスペースは、BPOの受け皿となることで、労働力のシェアリング拠点となりうる。

新たな連携を生むコワーキングスペースのイメージ

施策の方向性

「所有」から「利用」へ社会の価値観がシフトするのに合わせて、シェアリングを積極的に活用する。

仮説4:エリア・アントレプレナーの活躍

外部環境に関する情報の収集等

  • 2020年以降、全体の倒産件数は低位で推移しているが、コロナ関連倒産件数は増加しており、割合が高まっている。
  • 東京都における飲食店情報閲覧数は、2020年4月以降、19年同週比マイナスで推移しており、外食を楽しむ行動の回復はみえにくい。
  • 国土交通省では、多様な働き方を支える拠点や都市にゆとりをもたらすグリーンオープンスペースなど、新たな日常に対応する都市機能の充実を図るため、老朽ストックを活用したリノベーションを推進、民間ファンドも設立。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 町田市の飲食店情報閲覧数は、2022年に入ってから19年同週比マイナス60パーセント程度で推移しており、低調なまま横ばい。
  • 町田市では「町田創業プロジェクト」として、民間の創業支援事業者と連携して、起業に向けた各種支援を実施。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • 全国でリノベーションスクールの取組が行われている。遊休不動産を活用しながら新しく何かをやりたい人を探し、産業振興でコミュニティを再生することを目的として誕生。
  • リノベーションの取組として、不動産オーナーに代わりまちづくり会社が活用プランを策定する事例がある。入居者を集め、負担可能な価格でリノベーション物件を賃貸。スモールオフィスや古民家カフェ、長屋型店舗など整備・運営するほか地域の不動産価値の向上にも貢献。

リノベーションのまちづくりの取組例

  • 行政が管理するインキュベーション兼テレワーク施設の事例がある。創業希望者のほか、地元大手企業から派生したスタートアップも入居。行政の担当課も同じビルに入居し密に連携。創業相談、創業後の広報、マーケティング、営業等の相談が無料。また行政書士や金融機関担当者など外部の相談も無料で受けられる。

施策の方向性

創業・開業にかかるハードルの低減に努め、新しいビジネスに挑戦しやすいまちに進化させる。創業及び集客にシナジーを生むソフト・ハードの仕組みを構築する。

仮説5:MaaSの伸展

外部環境に関する情報の収集等

  • コロナによる外出控えなどにより、2020年度の鉄道輸送人員は3割減に落ち込み、2022年3月以降回復傾向にあるものの、コロナ前の水準に戻る様子は伺えない。
  • コロナ前から一般乗合バス事業の収支は赤字で推移していたが、コロナによりさらに乗客数が減少、運行本数を減便しても、赤字幅が大きく拡大、経営悪化が進行。
  • 移動に関するさまざまな課題を解決するために、自動運転やオンデマンドバスの実証実験が各地でおこなわれ、実装のフェーズを迎えている。
  • 移動に付加価値を与え移動を増やし収益を上げる取組としてMaaSが注目されており、都市型、地方型、郊外型など地域にあったモデルの検討が民間を中心に進んでいる。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 2020年9月以降、市内のバス路線の減便や深夜バスの廃止が続き、市民の足が失われる危機に面している。
  • 山崎町周辺エリアにおいて、小田急電鉄を中心とした体制によるオンデマンド交通「E-バス」の実証運行が行われた。さらに、高齢者を対象とした実証実験が行われる予定もある。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • アフターコロナにおいても域内需要は活発な見込み。デマンドバスによって新たな移動を地域に作ることが狙い。
  • MaaS事業者にとって郊外都市は人口が多く評価できる。今後増加するのはデマンド型。移動の目的づくりも重要。

デマンド型バスの導入イメージ

施策の方向性

MaaSに取り組む事業者の知見を活かしながら、域内交通を相互補完し、域内の移動総量を増やすような交通の体制づくりに取り組む。

仮説6:公民連携の推進

外部環境に関する情報の収集等

  • 市町村等の一般行政部門職員数はピーク時に比べ約2割減。正規職員が減少し、非正規職員が増加。少ない職員でこれまで通りの行政サービスを遂行することは難しくなっている。
  • 政府により「公的サービスの産業化」が掲げられ、公共サービスを民間企業等と公的主体が協力して担うことで、選択肢の多様化、サービスの効率化、質の向上を図ることが示された。
  • 自治体は「サービス・プロバイダー」から、新しい公共私相互間の協力関係を構築する「プラットフォーム・ビルダー」への転換も提案された。

町田市の現状把握のための基礎調査・分析

  • 企業・自治体・NPO・市民が連携して、まちづくりプロジェクトを企画構想するクロスセクターでの協創の場が継続しており、関係者をつなげる仕組みがある。
  • シティプロモーションの一環として、市民のやりたいことをオール町田で支援する取組が行われた。現在は終了したが、地域課題を住民自身が解決する経験が生まれた。

有識者ヒアリング・先進地視察

  • 企業から社会課題が提示され、自治体が条件を提案する事例がある。条件が合えば、企業の新規事業費の予算で自治体に資金を寄付し、社会課題の解決に向けた事業が行われる。お金を出して社会課題にアプローチしたい企業が多い。

新しい公民連携のイメージ

施策の方向性

社会課題の発見から公民が一緒に取り組み、大きな目的を共有しながら新たな価値の共創をめざす。

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