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広報まちだ掲載 デフアスリートの皆さんへインタビュー(全文)
2025年12月1日号デフアスリートの皆さんへインタビュー
左から 佐藤選手(バレーボール)・辻選手(オリエンテーリング)・堀選手(ビーチバレーボール)・山中選手(マラソン)
広報まちだ2025年12月1日号(1・2面)に掲載した記事のインタビュー全文を掲載します。
11月15日から26日に東京デフリンピックが開催されました。デフリンピックとは、4年ごとに開催される「きこえない、きこえにくい人のための国際総合スポーツ競技大会」です。
100周年記念となったこの大会に出場した町田市ゆかりのデフアスリートの皆さんに、日常生活や競技における困りごとやその解決方法、手話言語条例に期待する思いを伺いました。
山中孝一郎選手(デフ陸上競技(マラソン))プロフィールはこちら
ワーク・ライフ・競技バランスをどのようにとってますか?
佐藤選手(バレーボール)
【佐藤選手】
私の場合、正社員なので、毎日仕事をしており、7時間45分働いています。バレーボールは団体競技なので、個人競技とは違い、練習できる時間は限られています。候補内定した選手たちと一緒に練習できるのは夜しかないので、体育館が取れたら仕事帰りに、だいたい午後5時から9時まで練習をしています。
その他は、個人に必要なトレーニングをジムに行ったり、家の中でトレーニングをしています。
【堀選手】
私の場合は、競技活動の支援をしてくれている会社のオフィスで午前9時から午後4時まで働いていて、仕事と練習を両立できており、夜に練習ができるような環境にしてもらっています。
【辻選手】
私の場合は正社員契約であり、目黒区に職場があります。町田市から目黒区まで電車で通うと、大体、1時間半はかかってしまいます。
この電車で通う1時間半を練習に充てたい、ということを会社に説明して、今はほぼ、在宅ワークに変えていただきました。
デフリンピックが迫っているので、会社に行かなければいけない時は、みんなが集まる会議や、大事な話の時だけということをお願いしており、現在は、在宅ワークが中心です。
今、いろいろなインタビューを受けていますが、ほとんど平日の昼間に来てもらうことが多いです。なので、会社にどうしようかと、相談した結果、仕事の時間にやっていいよと、今は仕事と競技、動きやすい環境になっています。
【山中選手】
私は、システム開発担当をしています。会社まで1時間10分くらいかかっていましたが、コロナの影響で、在宅ワークに変わっています。なので、練習の時間は、朝早く起きて走っています。
【司会】
朝早くから、ということでしたが、何時から走っているのですか。
【山中選手】
午前6時30分前には始めています。
残業もあるので、朝の練習が中心になっています。週末は市民ランナーの友達と練習しています。
皆さんの勝負メシを教えてください
【山中選手】
炭水化物中心で、カレーやパスタを食べます。
【佐藤選手】
牛乳を飲みます。
【辻選手】
カレー系が多いです。逆に絶対食べないものは揚げ物です。
【堀選手】
勝負メシはありませんが、先週土曜日の大会前のご飯は、カツカレーでした。
日常生活や競技の中で、意思疎通で困ったことや、その解決方法について教えてください
堀選手(ビーチバレーボール)
【堀選手】
コーチとコミュニケーションを取る時は、口元が分かるような方向で、できるだけ大きい声で話してもらったり、どうしてもきき取れない時は、ペアの選手に手話通訳してもらっています。
【司会】
生活をしている中で困ったことや、その時に「このように解決をした」、「相手にこうしてもらった」など、何かありますか。
【辻選手】
北海道に行った際に、バスで空港に行きました。その時は、車内放送で飛行機の会社ごとに、降りる場所が違うと案内しており、私はきこえなかったため、ずっとスマホを見ていました。
そうしたら、他のお客さんが私の様子を見て、きこえない人なんじゃないかと察してくれ、スマホを打って、私に情報を教えてくれました。
その時に、乗る飛行機などをスマホで打って伝えたら、そこでちゃんと飛行機に乗ることができました。その人が私を見てろう者だと気付いて、いろいろ教えてくれたので、とても助かりました。
【司会】
たまたまバスで、一緒になった方ですか。
【辻選手】
そうです。知らない人です。ろう者同士でバスに乗っており、手話で話しているのを見て、ろう者だと気付いてくれたのだと思います。
【佐藤選手】
私は、3・4歳の頃から、人工内耳を装着しているので、装着によってきこえる時と、きこえない時の環境には慣れています。人工内耳は、電子機器なので充電は限られていて、だいたい12時間くらいで切れます。デフリンピックは、必ず人工内耳を外さないといけないルールになっているので、外して練習をしています。試合の際は、その場でコミュニケーションがすぐとれないので、前もって約束事を決めて動いています。
【司会】
そうなんですね。人工内耳をとった際、コーチや周りの人たちと、どのようにコミュニケーションを取っていますか。
【佐藤選手】
私は、スタッフ側に、健常者が多くいて、監督もいて、その他にもバレーボールの専門用語に理解のある手話通訳者もいるので、練習中に監督が何か言っていた時は、必ず手話通訳がついてくれます。そこで確認できたり、見えなくてわからない時は、他の選手に確認をして、競技ができるようにしています。
【司会】
ありがとうございます。皆さん、必ず競技中もコミュニケーションを取れるような環境になっているんですね。
山中選手に少し違う視点で、質問させていただきます。災害時、地震や火事などが起こった際は、どのように判断していますか。
山中選手(マラソン)
【山中選手】
地震の時は、感覚的に分かりますが、火事の時は、言葉では分からないため、においに気付かないと反応が遅れてしまいます。
また、競技の練習を行う際は事前にメニューを確認しており、何をするかは分かっているので、困ることは少ないです。
レース中は、応援してくれる人がいても、何を言っているか分かりませんが、目で応援を感じています。チーム競技の場合は、監督とのコミュニケーションや、一瞬の判断が必要だと思いますが、マラソンは個人競技なので、そこが違うところかなと思います。
【司会】
今、「一瞬の判断」というお話がありましたが、おそらく皆さんにも共通する部分だと思います。瞬時に判断する力は、必要ですよね。
【堀選手】
どういうボールが飛んでくるかは、相手の動きを見ることも大事ですし、そういうボールがきたらどう行動するかは、事前にペアと一緒に約束をして、プレーをすることがあります。
【辻選手】
私の競技の場合も、非常に判断力が必要な競技であり、山中さんがお話しした通り、チームの場合はコーチの指示があって判断しますが、競技中は個人で判断します。1人でレースをするので、ポストでタッチした後も自分の判断でルートをチョイスして、レースを進めなくてはいけません。
【佐藤選手】
ビーチバレーと同じように、相手のプレーによってどう動くか、という判断も大事ですし、その場ですぐコミュニケーションがとれないので、前もって約束ごとを決めて、それを第一に動いています。それが前提であり、実際は、その時のボールを落とさない、とりあえず行く、ということをチームの中で、意識をしてプレーしています。
(仮称)町田市手話言語条例に期待することはありますか?
【司会】
町田市では、今後、手話言語条例の制定を目指して、2025年度の後半から検討を始めていきます。
制定の目的は、1つ目「言語としての認知」、2つ目「聴覚障がい者の社会参加促進」、3つ目「手話の普及と教育」です。この条例の制定に期待することをお聞かせください。
【山中選手】
手話が言語であるという認識を皆さんが、より深められると思います。手話を通じて、聴覚障がい者に対する情報保障が改善されることを期待します。
【佐藤選手】
条例ができ、手話が言語であるという理解が高まることで、自分の中でも理解が得られず苦しい思いをしなくていいのかな、と期待しています。
【堀選手】
手話は、きこえなくても声を出せなくても会話ができ、相手にも伝えることができる、大切な言語の一つだと思います。聴覚障がい者が少しずつでもスムーズにコミュニケーションがとれるようになれば、今までより過ごしやすい生活になると期待しています。
辻選手(オリエンテーリング)
【辻選手】
日本では、ろう学校と普通の学校が分かれていることが多いです。日本の学校は、普通学校の中に難聴学級というクラスがあり、きこえる人と一緒に勉強しながら育つ環境にあるため、喋ることが中心になってしまうと感じます。
ろう学校は普通の学校に行って、授業を受けたり交流したりすることがありました。ろう者がスーパー等に行き、知らない人と会話する際も手話で話しをしていました。ニュージーランドは、手話で当たり前に会話をしている環境であり、手話が公用語として確立されている状況であることに驚きました。
デフリンピックが終わった後も、やはり共生社会を実現するのを期待してる人も多い状況にあります。他の自治体の条例では、手話の中で「日本手話」と「対応手話」に分かれて書いてある条例があります。「日本手話」も「対応手話」もまとめて1つ、日本の手話である、という考え方です。それをお互いに、いがみ合うことなく、誰もが安心して手話で表現できる環境に変わることを期待しています。
そして、ここ町田のイメージというと、やはりいろいろなスポーツが強いです。手話言語条例で、町田らしい行動をやっていくことで、全国から注目され、そして日本全体が変わる、そういうきっかけになるんじゃないかなと思います。
子どもたちの中で、手話を知らない子が多いと思います。学校の中で、総合的な学習の時間の中に、手話を授業として入れて、子どもたちが手話を学び、そしていろいろな言葉のコミュニケーションがあるということを身につけてほしいです。そして、大きくなった時、手話で何かできるんじゃないかと思ってくれたら、世の中が変わると期待しています。
【司会】
ありがとうございます。
今、辻選手に言っていただきましたが、「町田らしい」手話言語条例を作って、全国から注目をされると町田市のPRにも繋がっていくと思います。本日は、貴重なお話しをいただき、ありがとうございました。
