2 現状と課題 1 市のこれまでの主な取組 1974年 町田市の建築物等に関する福祉環境整備要綱制定 車椅子で歩けるまちづくりを目指し、全国に先駆けて道路、建築物の基準を示し、都市環境の整備を促進しました。 1993年 町田市福祉のまちづくり総合推進条例制定 道路の段差解消を始めとする高齢者、障がい者等に配慮した市内の建築物や道路等、施設のバリアフリー化の推進について規定しました。 1999年 高齢者、身体障がい者の移動の利便性・安全性の向上への取組 市内鉄道駅の10駅全てにエレベーターを設置しました。また、車椅子使用者を始め、高齢者、障がい者、乳幼児を連れた方など、だれもが利用できる大きさ・機能・設備等が整備された「みんなのトイレ」(現:「車椅子使用者対応トイレ」)の設置や視覚障がい者誘導用ブロックの敷設、案内の点字・外国語・LED表示、駅員のサービス技術向上への取組等、様々な取組がなされています。 2000年 町田駅周辺のバリアフリーネットワーク化調査 2001年 玉川学園前駅・成瀬駅周辺のバリアフリー化に関する基礎調査 町田市福祉のまちづくり推進協議会の設置 町田市福祉のまちづくり総合推進条例の改正により市長の諮問機関として設置し、市民参加による福祉のまちづくりの推進体制を確立しました。 2002年 「心のバリアフリーハンドブック」作成 福祉のまちづくり推進協議会において、障がい者理解を解説した入門書を作成しました。毎年市立小学校4年生全員に配布しているほか、市役所などでも無料で配布しています。 図 「心のバリアフリーハンドブック」の表紙 2004年 「みんなのおでかけマップ(バリアフリーマップ)」作成 車椅子使用者対応トイレが整備された施設など、バリアフリー施設を掲載した情報冊子を作成しました。 2006年 「情報バリアフリーハンドブック」「施設整備デザインブック」※作成 視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者等が情報を入手するための方法や問題点を知るための入門書、及び、高齢者、障がい者、子育て世代等を始めとするみんなが使いやすい施設作りのための配慮事項について分かりやすく説明した冊子を作成しました。 ※「施設整備デザインブック」は在庫終了により、現在は配布していません。 図 「情報バリアフリーハンドブック」「施設整備デザインブック」の表紙 2007年 町田市福祉輸送サービス共同配車センター設立 移動困難な高齢者、障がい者の外出を支援し、社会参加を促進する制度の一つとして市が設立し、町田市社会福祉協議会が民間事業者、NPO法人と連携して運営を行っています。 写真 共同配車センターで運行されている「あいちゃん号」と「やまゆり号」 2010年 町田市福祉のまちづくり総合推進条例改正 高齢者や障がい者を始めとする全ての人が、安心して快適に住み続けることができる地域社会の実現を図るため、心のバリアフリーやユニバーサルデザインの理念に基づいた条例への改正を行い、同年7月に施行しました。 2010年 福祉のまちづくり関連施策、関連事業の現状調査 全庁各部署に対しバリアフリー、ユニバーサルデザインに関する事業、取組を調査・確認しました。 2010年 福祉のまちづくりに関する市民団体ヒアリング調査 高齢者、障がい者、子育て支援にかかわる計6団体に対し、福祉のまちづくりに関するヒアリングを行いました。 2011年 福祉のまちづくりに関する町田市民アンケート調査 市民(高齢者、障がい者、子育て中の親など1,737人(827人回答))に対し、福祉のまちづくりに関するアンケートを行いました。 2011年 市有施設のバリアフリー整備状況調査 不特定多数の市民が利用する市有施設(小中学校、高齢者施設等を含む。)計218施設について、バリアフリー整備状況調査を行いました。 2011年 福祉タクシー、一般タクシーの活動状況等調査 設立から5年が経過する福祉輸送サービス共同配車センターのあり方の検討を開始しました。検討に当たり、移動困難者の外出状況などを把握するため、市内の福祉タクシー及び福祉車両を運行する一般タクシーの活動状況を調査しました。 2011年・2013年 町田市バリアフリー基本構想の策定 学識経験者、障がい者団体、交通事業者等が参加する福祉のまちづくり推進協議会バリアフリー部会において、地域一体での面的なバリアフリー化を推進するために、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)に基づき、「町田市内全域の移動等円滑化の全体方針」を策定。この方針に基づき、市内10地区においてバリアフリー基本構想を策定しました。また、2017年度からは社会情勢や地区の状況の変化に応じて基本構想の評価や改定を順次実施しています。 →2011年 全体方針、町田駅周辺地区 →2013年 鶴川駅周辺地区、玉川学園前駅周辺地区、成瀬駅周辺地区、つくし野駅周辺地区、すずかけ台駅周辺地区、南町田駅周辺地区(2014年一部変更)、相原駅周辺地区、多摩境駅周辺地区、山崎団地周辺地区 2012年 第1次町田市福祉のまちづくり推進計画の策定 4つの推進分野と38の推進事業からなる第1次町田市福祉のまちづくり推進計画を策定し、運用を開始しました。また、事業の改善につなげるための事業評価の仕組みを導入しました。 2012年 ユニバーサルデザイン接遇研修の開催 店舗での接客向上を図ることを目的とし、商店会、商工会議所、車椅子使用者、視覚障がい者、聴覚障がい者、外国人を交えた接遇研修を開催しました。 写真 研修の風景 2015年 「情報バリアフリーハンドブック」改訂 情報技術の進展に伴い、情報に関するニーズも多様化しました。より使いやすく現代に合った適切な内容とすることを目的として、高齢者や障がい者からヒアリングを実施し、2006年に作成した「情報バリアフリーハンドブック」を改訂しました。 2015年 福祉のまちづくりに関する町田市民アンケート調査 市民(高齢者、障がい者、子育て中の親など1,513人(778人回答))に対し、福祉のまちづくりに関するアンケートを行いました。 2017年 第2次町田市福祉のまちづくり推進計画策定 2018年から2020年 町田市バリアフリー基本構想の改定 →2018年 南町田駅周辺地区 →2019年 玉川学園前駅周辺地区、つくし野駅周辺地区 →2020年 鶴川駅周辺地区 写真 町田市バリアフリー基本構想改定に当たってのまち歩き点検風景が2枚 2020年 福祉のまちづくりに関する町田市民アンケート調査 市民(高齢者、障がい者、子育て中の親など1,748人(801人回答))に対し、福祉のまちづくりに関するアンケートを行いました。 2021年 町田市福祉のまちづくり総合推進条例施行規則の改正 東京都福祉のまちづくり条例施行規則の改正(2019年)に伴い、都の整備基準に対して市の基準を同等以上とする、及び市の現行規定においてさらなる整備等を促進するため、規則の一部を改正しました。 図 整備基準等マニュアルの表紙2点 2021年 町田市福祉のまちづくり総合推進条例整備基準等マニュアルの改訂 町田市福祉のまちづくり総合推進条例施行規則の改正及び東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルの改訂に合わせて、整備基準等マニュアルを改訂しました。 2021年 施設のバリアフリー点検実施 2021年5月にリニューアルオープンした「玉川学園コミュニティセンター」及び2021年10月に供用開始した「玉川学園前駅デッキ」において、福祉のまちづくり推進協議会委員による施設のバリアフリー点検を実施しました。点検による様々な意見や指摘から更なるバリアフリー化に取り組みました。 写真 バリアフリー点検の様子 2022年 まちだユニバーサル社会推進計画(第3次町田市福祉のまちづくり推進計画)策定 2 国及び東京都の動向 (1)国の動向 ◯「ユニバーサル社会実現推進法」の制定 「ユニバーサル社会実現推進法」が2018年12月に制定され、地方公共団体に対しては、ユニバーサル社会の実現に向けた施策を推進する責務や、障がい者、高齢者等の意見反映に関する努力義務が規定されました。加えて、障がい者、高齢者等の防災上の措置を講ずることも規定されました。 ◯「バリアフリー法」の改正 改正「バリアフリー法」が2020年6月に施行され、施設や経路のハード整備のみならず、心のバリアフリーなどのソフト対策も含めたバリアフリー化を促進するため、基本構想に記載する事業メニューの一つとして、心のバリアフリーに関する「教育啓発特定事業 ※」が規定されました。また、国・地方公共団体・国民・施設設置管理者の責務として、車両の優先席、車椅子用駐車施設、障がい者用トイレ等の適正な利用の推進が追加されました。 ◯「バリアフリー法施行令」の改正 改正「バリアフリー法施行令」が2021年4月に施行され、災害時に地域の高齢者や障がい者を含めた不特定多数の方の利用が想定される公立学校等に対し、バリアフリー化適合義務が規定されました。 ◯「移動等円滑化の促進に関する基本方針(国土交通省ほか)」の改正 「移動等円滑化の促進に関する基本方針」が2020年2月に改正され、心のバリアフリーの意識醸成を図るため、国、地方公共団体等が連携し達成する目標として、2025年度までに「心のバリアフリー」という用語の認知度を約50%とする旨が規定されました。 ◯「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正 「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」が2021年3月に改正され、車椅子使用者用便房で大型の電動車椅子使用者が回転できるよう、便房内における内接円の大きさを拡張することが示されました。また、多機能便房の機能分散化や個別機能を備えた便房の適正利用の推進等が追加されました。 ◯「災害対策基本法」の改正 全国的に大規模災害が頻発し、高齢者や障がい者が犠牲となっている近年の災害状況から、「災害対策基本法」が2021年5月に改正され、市町村長による避難行動要支援者の個別避難計画作成を努力義務とする旨が規定されました。 ◯「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の制定 全ての人が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資するため、障がい者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定める「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が2022年5月に制定されました。 同法には、地方公共団体の責務等として、「基本理念にのっとり、その地域の実情を踏まえ、障がい者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を策定し、及び実施する責務を有する」ことや、「障がい者でない者にも資することを認識しつつ施策を行う」ことが規定されています。 ◯「ユニバーサルデザイン2020行動計画」 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、共生社会の実現に向けたユニバーサルデザイン、心のバリアフリーを推進し、大会以降のレガシーとして残していくための施策を実行するため、2017年2月の「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議」において、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が策定されました。 (2)東京都の動向 ◯「東京都福祉のまちづくり推進計画」の策定 「東京都福祉のまちづくり推進計画」が2019年3月に策定され、全ての人が安全で安心して、かつ、快適に暮らし、訪れることができるユニバーサルデザインの理念に基づいたまちづくりを進めるため、施策を総合的かつ計画的に推進しています。 ・東京都福祉のまちづくり推進計画の分野別施策 1 誰もが円滑に移動できる交通機関や道路等のバリアフリーの更なる推進 2 全ての人が快適に利用できる施設や環境の整備 3 災害時・緊急時に備えた安全・安心のまちづくりの推進 4 様々な障害特性や外国人等に配慮した情報のバリアフリーの推進 5 都民等の理解促進と実践に向けた心のバリアフリーの推進 ○「東京都手話言語条例」の制定 手話が独自の文法を持つ一つの言語であるという認識の下、手話を使用しやすい環境づくりを推進することにより、手話を必要とする者の意思疎通を行う権利が尊重され、安心して生活することができる共生社会を実現するため、「東京都手話言語条例」が制定され、2022年9月1日に施行されました。 3 第2次計画推進の評価等 第2次計画においては、取組の成果を評価・検証するため、29の推進事業の各担当課が主体的に事業の改善と質の向上に展開するための「自己評価」、客観的かつ専門的な課題を把握する「外部評価」及び幅広く福祉のまちづくりに関する市民ニーズを把握する「市民アンケート」を実施しました。 「町田市福祉のまちづくり推進協議会」と「自己評価」、「外部評価」及び「市民アンケート」の関係は、下図のとおりです。 図 町田市福祉のまちづくり推進協議会と評価等の関係 (1)自己評価の主な意見 ・改正「バリアフリー法」(2018年11月施行)により、バリアフリー基本構想にバリアフリーマップの作成等に関する事項を定めることができ、定めた場合、市の求めに応じ各施設管理者はバリアフリー情報を報告する必要があります。 ・福祉のまちづくり推進協議会で実施したこれまでの施設点検の結果は、市役所内で情報共有を行っていますが、一覧や検索に課題があります。 ・改正「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(2020年2月)において、2025年度までに「心のバリアフリー」という用語の認知度を約50%にする旨が規定され、市も啓発活動を促進する必要があります。 ・「心のバリアフリーハンドブック」は初版から10年以上経過しており、内容を精査して新たな内容を盛り込む(教育啓発特定事業に対応)等、全面的な改訂を検討する必要があります。 ・公立学校は公共施設であり、児童・生徒だけでなく、市民開放や災害時の避難所として、今後はよりユニバーサルデザイン化を進めていく必要があります。 (2)外部評価の主な意見 ・単に施設や経路のハード整備のみならず、心のバリアフリーなどのソフト対策との一体的な実施が効果的であるため、特定事業に心のバリアフリーに関する取組(教育啓発特定事業)が必要です。 ・今までも福祉のまちづくり推進協議会などにおいて施設のユニバーサルデザイン・バリアフリーの点検を行ってきましたが、以前の指摘内容がプロジェクトにどう反映されているか、データベースにして次のプロジェクトで活用する必要があります。 ・小・中学校と連携して「心のバリアフリー」事業を進めるべきです。 ・第2次計画では、町田市の各事業において、広報が弱いということが分かりました。市は取り組んでいるのに、市民に伝わっていないのではないでしょうか。ユニバ計画にどうやって計画の推進事業を周知していくか、検討する必要があると思います。 ・一部の事業で市民参加の機会や市民意見の収集が不十分であると思います。 (3)市民アンケートの主な意見 ・心のバリアフリーの認知度は緩やかに上昇しましたが、認知している割合は30%台前半となっています。 ・「災害時や緊急時に不安なことは何か」の問いに対して、「避難施設での生活」の回答が最も多くありました。 4 第2次計画の課題 (1)推進事業の課題 【課題1】ユニバーサルデザインによる施設整備の促進 車椅子使用者対応トイレは十分な広さの確保が必要であるという意見や、バリアフリー基本構想において、施設等のハード整備のみならず、心のバリアフリー等のソフト面の取組も必要であるという意見がありました。より一層のユニバーサルデザイン化や、ハード事業にソフト対策を盛り込む新たな施策に取り組む必要があります。 【課題2】心と情報のユニバーサルデザインにおける更なる周知・啓発 「移動等円滑化の促進に関する基本方針」では、心のバリアフリーという用語の認知度を約50%とする目標を定めています。市民アンケートによる町田市の心のバリアフリーの認知度は約30%台前半となっており、更なる周知・啓発が必要です。また、福祉のまちづくり推進協議会の外部評価では、デジタル化に対応すべき意見があり、ユニバ計画においてデジタル化に係る取組が求められています。 【課題3】ユニバーサルデザインの観点によるいざという時の備え 主に高齢者、障がい者及び子育て世代を対象とした市民アンケートにおいて、「災害時に不安なことは何か」の問いに対し、「避難施設での生活」が最も多い回答でした。高齢化や障がい者数が増加する中、全国的に頻発する災害に対応するため、新たに高齢者、障がい者及び子ども等に配慮したユニバーサルデザインの観点による災害対策を実施する必要があります。 (2)推進体制の課題 【課題4】計画を推進する事業の広報・PR及び市民・事業者等との協働 福祉のまちづくり推進協議会の外部評価では、「第2次計画では、町田市の各事業において、広報が弱いということが分かりました。市は取り組んでいるのに、市民に伝わっていないのではないでしょうか。次期計画にどうやって計画の推進事業を周知していくか、検討する必要があると思います。」という意見や、「一部の事業で市民参加の機会や市民意見の収集が不十分であると思います。」という意見があり、これまで以上に広報・PRや、市民・事業者等との協働に取り組んでいく必要があります。 5 第2次計画の課題を踏まえた計画策定の方向性 町田市では、「4 第2次計画の課題」(P.16)に対応するため、更なるユニバーサルデザインの考え方による施設整備などハード事業と、心や情報のユニバーサルデザインの普及啓発などソフト事業のこれまでの取組に加え、ユニバーサルデザインの災害対策や広報・PR、市民協働の推進体制の構築により、「ユニバーサル社会」を実現する新たな計画を策定する必要があります。 また、その計画策定の方向性は、「4 第2次計画の課題」の【課題1】から【課題4】に対して、以下の【方向性1】から【方向性4】に整理します。 図 課題1から4を整理した図