10ページ 3 いろいろな人の声を聞いてみよう 〜困っていること・私たち、まわりができること〜 3-1 肢体不自由者(車いす・杖を使っている人など) ●困っていること(車いすを使っている人) ・坂道や、でこぼこした道を通るのが大変です。下りを怖いと思う人もいます。 ・高いところにある物を取ったり、床に落ちた物を拾ったりすることがむずかしいです。 ・階段やエスカレーターが使えないので、エレベーターを使います。 ・トイレを使うときは、広いスペースが必要です イラスト1:車いす使用者が陳列棚の上の方の商品を取ろうと手を伸ばしているが、届かなくて困っている様子。 ●困っていること(杖を使っている人、手足の一部が麻痺している人) ・物を持ったり、文字を書いたりすることがむずかしい人もいます。 ・バランスを崩しやすい人もいるため、車やバスで立っていることがむずかしいです。 イラスト2:紙にペンで文字を書こうとしているが、手が震えて困っている様子。 ●私たち、まわりができること ・エレベーターしか使えない人がスムーズに使えるように、階段やエスカレーターを使えるときはそちらを使いましょう。。 ・電車やバスの優先席、駐車場の優先スペースは必要な人のために空けておきましょう。 イラスト3:電車の優先席におばあちゃん、松葉杖の男性、妊婦が座っています。 11ページ ●車いすを使っている人への対応 その1 その人の車いすに合わせた対応が必要なので、どのように操作をすればよいのか、まず車いすを使っている人に確認しましょう。 その2 一人でお手伝いができない場合は、まわりの大人に声をかけましょう。 イラスト1:1段の段差の前に車いす使用者がいます。その車いす使用者の前には大人と子どもがおり、大人は車いす使用者の目線に合わせて少しかがんで話しています。 ●車いすから離れるときは 少しでも車いすから離れるときは、必ずブレーキをかけます。ほんの少しでも地面が傾いていると動き出してしまい、危険だからです。 ●坂道のときは ・上り:持ち手をしっかり握って、力を入れながらゆっくり押します。 ・下り:持ち手をしっかり握って、手が離れないように注意します。急な下り坂の場合は、後ろ向きに下りる方法もあります。 ●コラム 車いすの種類の紹介 車いすにはいろいろな種類があります。「手動車いす」や「電動車いす」のほかに、「子ども用車いす*」などがあります。 *病気や障がいが理由で移動できない子どもが利用するものです。ベビーカーと同じような形でも、その人に合わせてつくられているので簡単に折りたたむことができません。 イラストが3点あります。 手動車いす、電動車いす、子ども用車いすです。 12ページ 3-2 視覚障がい者 ●見え方について ・目の不自由な人の見え方は、人によってちがいます。 ・全く見えない人、見えにくい人がいます。 ・見えにくい人の中にも、まわりが見えない、中心が見えない、ぼやけて見えるなどさまざまです。 ・目の中心部分が見えていれば、なんとか読み書きができ、目の中心部分以外が見えていれば、なんとか歩くことができるなど、見え方によってできることがいろいろあります。 見え方のイメージ画像が3点あります。 ぼやけて見える見え方、視野が狭い人の見え方、中心が見えない見え方。 ●困っていること(白杖を使って歩く人) ・白杖を使って歩いているため、急に白杖をさわられると、とても怖いです。 ・点字ブロックを手がかりに歩いているため、点字ブロックの上に自転車や荷物などが置いてあると先に進めません。(点字ブロックについては22ページ) イラスト1:点状ブロックの上に段ボールがおいてあり、白杖を使って歩いている視覚障害者の白杖が段ボールにぶつかって困っている様子。 ●困っていること(白杖を使っていない人) ・まわりの人に目が不自由なことに気づいてもらえません。 ・盲導犬の役割を知らない人がいます。(盲導犬については25ページ) 13ページ ●私たち、まわりができること ・信号機が青になったら、「青になりましたよ。一緒に渡りますか?」と声をかけましょう。 ・点字ブロックの上に立ち止まったり、物を置かないようにしましょう。 イラスト1:横断歩道の手前で、子どもが補助犬を連れた人に「青になりましたよ」と声をかけている様子。 ※盲導犬は横断歩道を渡ってよいかどうかを判断できません。 ●白杖 白杖は足元の状況を確認したり、まわりの人に目が見えにくいことを伝えるために使うものです。 ●点字 点字とは、目の不自由な人が指で読む文字のことです。文字や数字などをポツポツと盛り上がった、横2列×縦3列の6つの点で表します。 ただ、目の不自由な人の中には、点字が読めない人もいるので、点字が必要かどうか確認しましょう。 画像1:「あいうえお」の点字表記 ●一緒に歩くときは… その1 どのように一緒に歩いたらよいか、目の不自由な人に確認します。 その2 歩くときは、段差や曲がる方向などを伝えます。「あっち」や「こっち」などの言葉は使わず、「左」や「右」など具体的に方向を伝えましょう。 イラスト2:子どもが白杖を持っている視覚障害者を誘導している様子。視覚障害者が子どもの肩に手を乗せて、子どもと一緒に移動している様子。 14ページ 3-3 聴覚障がい者 ●聞こえ方について ・耳の不自由な人の聞こえ方は人によってちがいます。 ・全く聞こえない人、聞こえにくい人などがいます。また、発音の区別がつかない人やつきにくい人もいます。 ・話すことはできるけど、聞こえない人もいます。 イラスト1:窓口で「佐藤さん3番窓口まで」と呼び出しているが、補聴器を付けた人は「さとう?かとう?」と、区別がつかず困っている様子。 ●困っていること ・ぱっと見では耳が不自由なことがわからないため、まわりの人に気づいてもらえません。 ・車や自転車の音、電車やバスのアナウンス、緊急放送や非常ベルの音が聞こえなかったり、気づかないことがあります。 ・口の形を見ながら、話していることを確認しています。マスクをしていると口の形がわかりません。 ・補聴器を着けていても、内容が伝わっていない(聞こえていない)人もいます。 イラスト2:後ろから車がクラクションを鳴らしているのに、気づかずに歩く男性。運転手は怒った顔をしています。 イラスト3:補聴器を着けている女性が、マスクをしたまま話す人の口の形が見えなくて、困っている様子。 ●私たち、まわりができること ・自転車のベルを鳴らした時に振り向いてもらえない場合などは、「もしかしたら耳が聞こえないのかも」と思って、一度止まってみましょう。 ・口の形が見えるように話しましょう。また、ジェスチャーも一緒にやると、伝わりやすいです。 イラスト4:買い物袋を持った補聴器の女性。 女性の吹き出し「お店に買い物に行ったとき、最後に手話で「ありがとう」と伝えてもらえて嬉しかったです。」 15ページ ●目で見てわかるコミュニケーション 目で見てわかるコミュニケーションの方法はいろいろあります。話す相手の顔を見て、口をしっかり開けて話しながら、表情やジェスチャーで伝えます。“伝えたい”という思いが大切です。 手話 手話は、耳の不自由な人が使っている言葉です。手の指、体、目の動き、顔の表情などを使って話すものです。 イラスト1:「ありがとう」の手話。左手甲に右手を直角にのせ、右手を上にあげます。 筆談(紙/スマートフォンやタブレット) 紙や手のひらに文字などを書いたり、端末に文字を打ったり、声を文字に変えて画面を見せたりする方法などがあります。 イラスト2:メモの筆談とスマートフォンの画面。メモには「明日は5階に」と書いてあり、スマートフォンの画面には「駅はどっちですか?」と表示されています。 ジェスチャー 手や体の動き、顔の表情で伝えます。 イラスト4:ジェスチャーをしている様子。頭の上に大きく手を振りながら口を開けています。 口話 口の動きや形がわかるように、口を大きく開けて話します。 イラスト5:口を大きく開けて話をしている様子。 この他にも、空書(空中に文字を書いて伝える方法)や、指文字(50音を指の形で表す方法)などがあります。 ●コラム 補聴器 耳の不自由な人の聞こえを助けるものです。耳あな式や耳かけ式などがあり、ワイヤレスイヤホンと見かけが似ていますが、使い方がちがいます。他には人工内耳というものもあります。 耳の不自由な人にとって、とても大切なものなので、無理にさわらないようにしましょう。 ワーク 10〜15ページを読んで、気がついたことや、感じたことを書いてみましょう。 16ページ 3-4 知的障がい者/発達障がい者 ●知的障がいとは? ・自分の気持ちを伝えることが苦手な人が多いです。 ・早口で話しかけられたり、一度にたくさんのことを言われたりすると、相手の言っていることがわからなくなることがあります。 ・いつもとちがう状況になると不安になったり、トラブルが起きたときに、その場に合わせた行動をすることがむずかしい人もいます。 ・順番に並ぶなど、ルールを理解することが苦手な人もいます。 イラスト1:知的障害者に対して一度に「どうしました?」「何かお困りですか?」「何かお手伝いしましょうか?」と質問しているが、何も答えられず焦っている知的障害者の様子。 イラスト2:普段通る道が工事中で通行止めになっている状況を見て、困っている様子。 ●発達障がいとは? ・急な出来事や予定の変更に対応することが苦手な人もいます。 ・光や音、肌ざわりなどの刺激を強く感じる人もいます。 ・気が散って、集中できず、じっとしていられない人もいます。 ●コラム 変わってみえる行動にも本人なりの理由があります ・ジャンプをしたり、体を前後にゆらしたりするなど、同じ行動をくり返すことがありますが、決して、まわりを困らせようとしているわけではありません。 イラスト3:上下にジャンプしている(飛び跳ねている)様子。 イラスト4:左右や前後に体をゆらしている様子。 イラスト5:同じことを繰り返しぶつぶつ言っている様子。 17ページ ●私たち、まわりができること ・短い文章で、「ゆっくり」「ていねいに」「わかりやすく」説明しましょう。 ・急がせず、落ち着いて言葉が出てくるのを待ちましょう。 ・質問する場合は、相手が「はい」「いいえ」で答えることができるように工夫しましょう。 イラスト1:「知りたいのはトイレの場所ですか?」と回答しやすい質問で聞かれて、「はい!」と答えている様子。 ●コラム 不安やストレスを減らすための工夫 身のまわりの音や光が、日常生活を送る上で影響が出てくるほど大きく聞こえたり、まぶしく感じたりすることで、不安やストレスを感じる人がいます。それらを減らすための工夫として、以下のようなものがあります。 ・イヤーマフ 雑音などまわりの音を聞こえにくくするものです。耳全体をおおう形をしていますが、音楽などを聞くヘッドホンとは使い方がちがいます。 イラスト2:イヤーマフを着けている様子 ・カームダウン・クールダウン室/スペース 外の音や光などをなるべくさえぎるための部屋やスペースで、気持ちを落ち着かせることが必要になる人が利用します。 イラスト2:四角いカームダウン・クールダウン室があり、壁にはピクトが貼られています。出入口はロールスクリーンが閉まっており、内部には目をつぶって落ち着いている様子の人がいる様子。 *発達障がいにはいくつかの診断名がありますが、いくつかのタイプが重なっていることが多く、その重なり方や症状などは人によってちがいます。そのため「診断名=その人の特徴」とは言い切れません。 18ページ 3-5 妊婦、子育て中の親 ●困っていること ・おなかに赤ちゃんがいても、おなかが大きくないとまわりの人に気づいてもらえません。 ・ベビーカーを押していると、階段やエスカレーターの上り下りができません。 ・電車やバスの中で、急に赤ちゃんが泣きだすと、あわてたり、申しわけない気持ちになったりします。 ・小さな子どもの横を、スピードを出した自転車などが追いこしていくことが怖いです。 イラスト1:ベビーカーを押している人が階段の下で困っている様子。 イラスト2:小さな子どもが親と手を繋いでおり、その横をスピードを出している自転車が追い越していく。親はすぐ横を走り抜けた自転車を見て怖がっています。 ●私たち、まわりができること ・電車やバスの中で、マタニティマークをつけている人や、赤ちゃんを抱いている人がいて、あなた自身が席をゆずれるときは席をゆずりましょう。 ・赤ちゃんが泣いていても、やさしい気持ちで見守りましょう。 イラスト3:電車の中で泣き出した赤ちゃんを親がなだめていますが、親の両側に立っている人は笑顔で赤ちゃんを見ており、1人は「大丈夫よ〜」と言っています。 ●コラム マタニティマーク まわりの人に、おなかに赤ちゃんがいることを知らせるために、かばんなどにつけるマークです。 画像1:マタニティマーク ワーク 16〜18ページを読んで、気がついたことや、感じたことを書いてみましょう。 19ページ 3-6 そのほか、まちにはさまざまな人がいます (1)高齢者 ●困っていること ・耳が聞こえにくくなるため、話している内容が聞き取りにくくなったり、インターホンが鳴っていることに気づきにくくなる人もいます。 ・新聞や説明書などの小さな文字が読みにくい人が多くなります。 ・動きたいという気持ちがあっても、若いころのように体を動かすのがむずかしくなります。 ・注意力に欠け、だまされやすくなる人もいます。 イラスト1:椅子に座って新聞を読んでいる高齢者がインターフォンの「ピーン ポーン」の音に気が付かない様子。膝に乗っていた猫は音に気が付いている様子。 イラスト2:書類のが小さくて、虫眼鏡を使って小さな文字を読んでいる高齢者。 (2)内部障がい者・難病の人 ●内部障がいとは? 心臓・腎臓や呼吸器、膀胱や直腸など、体の内部が働きにくくなったり、なくなっている障がいです。 ●難病とは? 原因がわからないため、治す方法が決まっていない、あるいは治りにくい病気です。 ●困っていること ・外見からは「障がいがある」ことがわかりにくく、電車やバスの優先席に座っていると、まわりの人から不審な目で見られることがあります。 ・体力がない人や、体調が悪くなりやすい人もいます。 ・呼吸器に障がいがある場合は、たばこのけむりなどをとても苦しいと感じます。 ・風邪などがうつると悪化しやすくなる人もいます。 ●コラム ハート・プラスマーク 内部障がいは見た目ではわかりにくいため、まわりの人に、理解と協力を広げるためのマークです。 画像1:ハート・プラスマーク 20ページ (3)精神障がい者 ●知ってほしいこと ・見た目ではわからないため、まわりの人に気づいてもらえません。 ・薬の副作用で早く起きられない、疲れやすいという人もいます。 ・人との関わりに不安を感じたり、緊張したりする人が多く、社会生活や日常生活を送る上でさまざまな困りごとがあります。 ・まわりの人が本人やその家族に対して理解をもって接することで、こうした困りごとを少なくすることもできます。 ・適切な治療や薬、リハビリテーションやまわりの人の支えにより、地域で安定した生活ができるようになっていることを知ってください。 イラスト1:ソファーに座って、色々なことを考えていて頭がごちゃごちゃになって困っている人の様子。イラストの下に「いろいろ考えてわからなくなってしまうこともあります。」と記載があります。 イラスト2:電車で向かい側に座った人たちが笑顔で会話していることを見て、何とも言えない表情をしている様子。イラストの下に「人が話している姿を見て、自分が笑われているような気がする人もいます。」と記載があります。 イラスト3:満員電車の人混みが怖くて電車に乗れず、ホーム上で震えている様子。イラストの下に「人混みが、とても怖いと感じる人もいます。」と記載があります。 ●コラム ヘルプマーク/ヘルプカード ヘルプマークは、内部障がいや難病の人など、助けや配慮を必要としていることが見た目からはわからない人たちが、助けてもらいやすくなるように、まわりの人たちに配慮を必要としていることを知らせるマークです。 ヘルプカードは、障がい者が緊急時や日常生活の中でまわりの人へ助けを求めるときに見せるものです。どういう手助けが必要か書かれています。 画像1:ヘルプマークとヘルプカード 21ページ (4)高次脳機能障がいの人 ●高次脳機能障がいとは? 病気や交通事故により、脳が傷ついたことが原因で、新しいことを覚えるのが苦手、集中力が続かない、うまく家事や仕事を進められないなどの特徴があります。 ●困っていること ・見た目では障がいがあることがわかりにくいため、まわりの人に気づいてもらえないことがあります。 ・説明を聞くときに、紙(プリント)やパソコン・スマートフォンの画面など、目で見てわかるものがないと、理解しにくいと感じる人が多いです。 (5)外国の人たち ●困っていること ・日本語がむずかしく、災害時などの情報がわかりにくい人もいます。 ・日本と自分の国の考え方や習慣のちがいにとまどうことが多いです。 ・みんなが英語をわかるわけではありません。英語がわからない外国の人たちもたくさんいます。 (6)性の多様性 性には、「こころの性(自分が実感している性別)」「からだの性(生まれたときの体の性別)」「好きになる性(好きになる相手の性別)」「表現する性(言葉づかいや服装など自分が表現したい性別)」などがあります。性のあり方はさまざまです。 そのため、見た目や声で性のあり方を決めつけたり、 性別を限定したりする表現には気をつけましょう。 以上