更新日:2019年1月4日
町田市民文学館ことばらんどでは、2006年の開館以来、町田ゆかりの作家の自筆原稿や旧蔵品、絵本の原画などをはじめ様々な文学資料を収集してきました。その中の一部はこれまでに2階展示室で開催する企画展で展示されましたが、地下にある収蔵庫にはまだお披露目されていない資料も多くあります。「ことばらんどお宝紹介」は、こうした収蔵品の中から、市民の皆様にぜひご覧いただきたい資料を順次公開するミニ展示シリーズです。1階文学サロンで行う展示ケース1台分の小さなコーナーですが、普段は目にすることのできない貴重な資料をご紹介していますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
シリーズ第5弾は、2010年春に開催した「紙芝居がやってきた!」展の折に購入した街頭紙芝居をご紹介します。
街頭紙芝居とは、自転車に乗った紙芝居屋が公園や原っぱなどに子どもを集めて駄菓子を売り、上演した紙芝居です。紙芝居が誕生した昭和初期は経済不況により失業者が多く、手軽に始められる商売として紙芝居屋が急速に増え、その人数は1933年には東京市だけで2500人にものぼりました。作品は、1930年代に流行した「黄金バット」に代表されるように、子どもたちの関心を引く奇抜で刺激的な内容であることが特徴で、絵はすべて手描きの一点もの。演者は裏書きの通りに演じるのではなく、アドリブを交えたり歓声に応えたりするなど柔軟に対応して、子どもたちの心を惹きつけました。街頭紙芝居は戦争拡大の影響で一時下火になりますが、戦後は再びブームが起こり、1960年代にテレビが普及するまでは子どもに人気の娯楽でした。なお、現在も図書館や保育園等で使用されている紙芝居は、1933年に生まれた教育紙芝居に連なっており、街頭紙芝居とは異なる系列のものです。
今回展示するのは、戦後に聖和社が制作した「てる坊」という作品。人間の男の子・てる坊のドタバタの日常や擬人化された動物たちと繰り広げる冒険譚、江戸時代を舞台にしたものから西遊記になぞらえた連作「珍遊記」シリーズまで、手を替え品を替え様々な物語が生み出されました。作者名は「竹下実」、「坂のぼる」や「坂上のぼる」など巻によって異なり、詳しいことはわかっていません。資料が散逸してしまっているため謎が多い作品ですが、716巻まで存在していることが確認されており、人気のシリーズだったことが窺えます(当館では、第41巻から第634巻までのうち計21巻所蔵)。この機会に、子どもたちを魅了した街頭紙芝居をぜひお楽しみください。
※第5弾の展示は2019年1月5日(土曜日)から3月17日(日曜日)までですが、資料保護のため、会期中に一部展示替えを行います。
※今回は、1階文学サロンの壁面も利用した拡大版のミニ展示となります。
※テーマや展示期間は変更になる場合がございますので、ご了承ください。